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フェローシップ

韓国 fellowship program レポート 2025

KFS traveling fellowship 2025 参加レポート

兵庫県立加古川医療センター 整形外科
  高原 俊介 先生

2025年4月22日~30日に行われたKFS traveling fellowshipへの参加の機会をいただきましたので、報告します。今回のfellowship programはAjou University Hospitalでの研修から始まり、KOTIC 2025 and the 51st Annual Meeting of the KFSへの参加、最後にKorea University Guro Hospitalでの研修でした。東北大学の有野敦司先生、2名の台湾からのfellowと同行させていただきましたが、いずれの経験も非常に刺激的で思い出深いものでしたので、少しでも共有できればと思います。

① Ajou University Hospital

4月21日の夜にインチョン空港に到着すると、お迎えの人が大学のある水原市へのタクシーまで丁寧にエスコートしていただきました。1時間ほどで水原市のホテルに到着し、翌朝はホテルまでWon-Tae Cho先生が迎えに来てくださりました。初対面から大変friendlyな先生で、研修中やその後の学会でも大変面倒を見てくださいました。

Ajouは水原市にある巨大な大学病院です。外傷センターには韓国全土から多発外傷、重度外傷患者の搬送があり、骨盤骨折の手術だけでも年間200件を越えるようです。韓国では当たり前のようですが、手術の執刀を4-5人のconsultantが行っています。昨年のfellowの先生方も書かれておられますが、韓国では2024年にレジデントのストライキがあり、現在でも特に都市部の病院ではレジデントが戻ってきておらず、Ajouおよび後に訪問するGuroでは非常に少ない医師で診療をしています。少ない人数で膨大な業務をこなす秘訣を学びたく、できるだけ多くの手術を見学・前立ちさせてもらいました。①手術体位、機材、透視が非常に洗練されていること、②熟練のpractical assistant(PA)がいること、この2つに加えて、外傷のエキスパートによる流れるような手術が行われていました。日本とはシステムの違いがあり、取り入れができること、できないことはありますが、日本に帰ってから少しずつ真似をさせてもらっています。1件1件の手術は非常に早く終わるため、合間には症例ベースのdiscussionをすることができ、難しい症例での日韓台のそれぞれの治療法の相違点を学ぶことができました。手術内容としては、ミニプレートが多用されていること、多くの場合で自家骨移植の採骨を脛骨近位から行われていること、上腕骨の前方MIPO用にY字型のプレートが開発されていて、かなり遠位側の骨幹部骨折に用いられていることに驚きました。

また、連日ランチとディナーにご招待いただき、食べきれないくらいの料理とお酒をいただきました。水原市にはKTウィズというプロ野球チームもあり、元阪神のメル・ロハス選手が在籍しているとあって、野球の話に花が咲きました。もっとも、一番野球の話に食いついてこられたのは台湾からのfellowでしたが。なお、メル・ロハス選手は執筆時点では退団されています。
最終日は世界遺産の水原華城を観光し、名残惜しくも水原市を後にしました。

外傷センターの入り口にて
外傷センターの入り口にて

Ajouの先生方、日本・台湾のfellowとのディナーにて
Ajouの先生方、日本・台湾のfellowとのディナーにて

左からDr. Koh、Dr. Cho、Dr. Sakong、Dr. Chang(台湾fellow)、有野先生、筆者、Dr. Chen(台湾fellow)、Dr. Song、Dr. Lim
左からDr. Koh、Dr. Cho、Dr. Sakong、Dr. Chang(台湾fellow)、
有野先生、筆者、Dr. Chen(台湾fellow)、Dr. Song、Dr. Lim

水原華城の探索。水原市は本当に奇麗な街です。
水原華城の探索。水原市は本当に奇麗な街です。

② KOTIC 2025 and the 51st Annual Meeting of the KFS

私たちfellowは、KOTIC2025でのpresentationの機会が与えられました。KFSの学術集会がinternationalにversion upしたもので、全セッションが英語で行われました。
私は「Continuous Local Antibiotic Perfusion (CLAP) on Treatment Efficacy in Fracture-Related Infections: A Multi-Center Study」のタイトルで発表させていただきました。Ajouの院内カンファレンスでも発表の機会をいただき、厳しい(?)質疑応答をたくさんいただいていたので、緊張することなく無事に発表を終えることができました。
会場は3部屋とJOTAより規模は小さいものの、内容はかなり密度が濃く、強い熱気を感じました。恥ずかしながら、海外の学会で会期中にこれほど長い時間会場にいた学会は初めてで、そのくらい魅力的で引き込まれる学会でした。日本からもJOTAから多くの先生が参加され、交流を深めることができました。

前日の晩餐会会場で
前日の晩餐会会場で

私はCLAPの発表をさせていただきました
私はCLAPの発表をさせていただきました

日本から参加された先生方と
日本から参加された先生方と

会長招宴ではテコンドーの実演がありました。初めて見ましたが、すごい迫力で感動しました
会長招宴ではテコンドーの実演がありました。初めて見ましたが、すごい迫力で感動しました

③ Korea University Guro Hospital

1日間だけintervalがあったので、ソウル市内観光(明洞、江南)の街ブラを堪能後、最後はJK Oh先生のいらっしゃるGuroでの研修でした。Ajouとは違って、慢性骨髄炎や偽関節の手術の割合が高く、私が育った神戸大学の環境と似ている印象で、親近感が湧きました。今までたくさんのfellowに行かれた先生も書いておられましたが、Oh先生は大変ご高名、ご多忙な先生であるにもかかわらず、流ちょうな英語で親切かつ熱心に接していただきました。英語のトレーニング方法として、毎日1時間英語を聞く、声に出すという習慣を長年されているようです。その時は自分も取り組もうと心に誓ったのですが、帰国後は3日坊主となってしまい、今この執筆をしながらもう一度Oh先生の言葉を思い出して自分を奮い立たせたいと思っています。 Guroで治療においても印象に残ったことが多く、その1つは感染性偽関節の厳格な治療strategyを順守されておられることです。Masquelet techniqueを基本戦略とされていますが、感染のコントロールのフェーズと骨移植のフェーズの間に、徹底的な術中検体の採取と病理学的評価をもとにした、客観的かつ再現性の高い戦略をとっておられました。自分たちが行っているCLAPでの治療においても、より高いレベルで議論するためには、客観性と再現性のある戦略の確立が必要であることを痛感しました。もう1つはBMP-2の臨床応用です。韓国では大腸菌由来BMP-2が臨床で使用されています。私も大学院時代に新倉先生のされておられるBMP研究を傍で見ておりましたが、韓国でも多くの患者さんに使用され、巨大な骨欠損が自家骨移植なしで骨化している症例を見せていただき、衝撃を受けました。保険の面など、クリアすべき課題についてもたくさん教えていただきました。近い将来、日本でも臨床使用が許可されることを切に願います。
Guroでの3日間のうち1日は、Oh先生の外来見学でした。複数の部屋をグルグルと回って1人1人に丁寧な説明と検査・機能のチェックをされておられます。看護師、フェロー、秘書が1人ずつついて、たくさんの患者さんをスピーディーに見ておられるのですが、多くの患者さんの笑顔がとても印象的でした。衝撃的なレントゲン画像をたくさん見せていただき、適宜解説してくださり、私にとって3日間の中で最も密度の濃い1日でした。

Guro Hospitalの外観。近代的な建物で、caféやレストランなどのショップも非常に充実
Guro Hospitalの外観。近代的な建物で、caféやレストランなどのショップも非常に充実

外来にて
外来にて

JK-Oh先生と
JK-Oh先生と

左からDr. Choi、有野先生、筆者、Dr. Kang、Dr. Konlawat(タイからのfellow)、Dr. Oh、Dr. Chen
左からDr. Choi、有野先生、筆者、Dr. Kang、Dr. Konlawat(タイからのfellow)、Dr. Oh、Dr. Chen

今回のfellowshipで経験させていただいたprogramはいずれも私にとって衝撃的で、参加できて本当に良かったと心から思います。滞在中にお世話になりましたAjou、Guroの皆様、KFSの皆様、このような機会を与えていただきました日本整形外傷学会の皆様に感謝いたします。また、同行していただきました有野先生とは毎日一緒に過ごし、深く語り合い、観光、食事、お酒ではテキパキと僕をリードしてくれました。本当にありがとうございました。最後に、2週間弱の不在をお許しいただきました加古川医療センターの皆様に深く感謝いたします。