千葉大学大学院医学研究院 整形外科
松浦 佑介 先生
Korean Fracture Society and Japanese Society for Fracture Repair travelling fellowship programに東京医科歯科大学整形外科の王耀東先生と共に参加してまいりました。私は、他学会の講演の関係で2024年4月26日、27日に釜山で開催された第50回KOFS Annual meetingから参加し、その後4月29日、30日に日本骨折治療学会および韓国骨折治療学会のTravelling fellowshipプログラムとしてSuwon(水原市)にあるAjou University Hospital Trauma Centerを訪問して参りましたので、私の方からはKOFS Annual meetingとAjou Universityの訪問についてご報告させていただきます。
KOFS Annual meetingは第50回という節目に当たり、盛大に行われました。日本からも澤口先生、正田先生をはじめ多くの先生方が発表され、非常に活発な議論が行われました。私は"Predicting Weight-Bearing Capacity in Patients with Comminuted Tibial Fractures Using Patient-Specific CT-Based Finite Element Analysis"というタイトルで、患者特異的有限要素解析による骨折術後の荷重スケジュール決定に関する発表をいたしました。学会では多くの有限要素解析に関する研究が報告されており、非常に刺激的でした。学会初日に行われたGala Dinnerも盛大に催され、素晴らしいおもてなしを受け、外傷医療における日本と韓国の交流の深さを改めて実感する機会となりました。
学会に引き続き、Ajou University Hospitalでの研修を行いました。Ajou Universityの外傷センターでは年間1300件の多発外傷を5人の医師で担当し、3機のヘリコプターを有していて韓国全土から外傷患者を受け入れているとのことでした。私達がFellowshipに行く2ヶ月前に、医学部定員の増員に対する医学生・レジデントによる韓国全土のストライキが始まり、韓国の医療界は衝撃に包まれていました。外傷の領域でもその影響を受けて、レジデントが診療に参加できず、多くの病院で症例を制限していました。Ajouでもレジデントはストライキ中であり、レジデントなしでの診療体制でした。しかしながら、Ajouでは制限することなく診療を続けていて、むしろ他院の症例も受け入れていたため、通常よりも多い症例数であるとのことでした。
私達はCho Wontae先生とLim Sumin先生の2人の手術を見学することができました。お二人とも若手の先生ですが、自立して考えながら適切に手術している姿は刺激的でした。通常はレジデントを前立ちにして医師2人で行うとのことでしたが、研修時は医師1人と器械出しの看護師、Practical Assistant(PA)、外回り看護師という限られた人数で手際よく手術を行っているのが非常に印象的でした。PAをはじめ非常に優秀なコメディカルに支えられて医師が仕事に専念できているようでした。
Sakong Seungyeob先生が昼ご飯を兼ねて敷地を案内してくださいました。その途中にもDoctor Heliが飛んできており、非常に多くの外傷患者が集まっている印象を受けました。外傷センターの隣には2029年に開業予定の新外傷センターが建築中であり、今後さらに韓国中の外傷患者が集中するとのことでした。
初日の夜は外傷チーフのSong Hyungkeun先生と手外科のChoi Wansun先生も合流し、日本と韓国での医療について様々な意見交換をすることができました。2日目の夜はソウルに移動し、Asan Medical CentreのJi Wan Kim先生が先生自身おすすめの平壌スタイルのレストランにご招待くださいました。非常に楽しいひと時を過ごすことができました。
最後に、この素晴らしいFellowshipの機会を与えてくださった日本骨折治療学会の先生方、KFSの先生方、長期間の不在を了承していただいた千葉大学整形外科ならびに手外科グループの先生方に深く御礼申し上げます。
KOFSでの発表
Ajou University Hospital Trauma Center エントランス
Suwonカルビを囲んで 左からSakong先生、王先生、私、Song先生、Choi先生、Lo先生(台湾Fellow)、Cho先生
マッコリとともに 左からLo先生(台湾Fellow)、Kim先生、Cho先生、王先生、私