医療従事者の方へ

フェローシップ

韓国・台湾 fellowship program レポート

韓国Fellowship渡航記

兵庫県立西宮病院 四肢外傷センター
北田真平

 この度、日本骨折治療学会とKorean Fracture SocietyによるExchange FellowshipのメンバーとしてKorea University Guro Hospital(高麗大学九老病院)とKyungpook National University Hospital(国立慶北大学病院)の2病院で研修を行いましたので、ここに謹んでご報告申し上げます。同行メンバーは富山市民病院の重本顕史先生です。重本先生と私はこれまでも学会やAOコースなどでご一緒することが多く、その温厚な人柄を慕っておりましたので、毎日安心して研修することができました。

 私は前半に研修を行ったKorea University Guro Hospitalの研修とその後に参加した45th Annual Meeting of Korean Fracture Society(KFS)および4th Korean-Japanese Pelvic Acetabular Injury Conference 2019 について報告いたします。

 研修は2019年4月22日から開始でしたが、この先の10連休のゴールデンウィークとその次の週はヨーロッパの学会および日整会に連続して参加することになっていました。長期間家を空けてしまうため、家族と共に渡韓し19日から21日まで共にソウルで過ごすことができました。

 4月22日は滞在先のホテルにJW Cho先生が迎えに来てくれました。Cho先生は前年にKFSからのFellowとして湘南鎌倉病院と岡山医療センターで研修されたご経験があり、今回の我々を迎えるにあたりとても周到な準備をして頂きました。普段も手術と研究でとてもお忙しいにもかかわらず、我々のことを常に配慮して下さいました。

 Guro Hospitalの外傷学の教授はJK Oh先生です。以前にも度々AOコースなどでお会いし、提示される手術後のレントゲンの素晴らしさに毎回感動していました。また非常に英語が堪能でネイティブスピーカーと同じくらい流暢に会話されます。教授の英会話習得法について、個人的に教えて頂くことができたので後ほど記すことにします。また、足関節・足部の外傷はHJ Kim教授が担当されます。

 研修初日の月曜日は朝9時から手術の見学をしました。手術は2部屋で平行して行われ、Oh先生、Kim先生、Cho先生が交代で執刀されます。助手としてFellowの先生方が入られますが、彼らは閉創や自家骨の採骨などは担当できますが、インプラント設置はさせてもらえません。韓国の厳しいルールを垣間見ることができました。

 月曜日はOh先生の手術が特に多い日です。Oh先生は骨髄炎や偽関節、変形治癒などの難治性治療がご専門でもあり、この日も沢山の手術がありました。興味深かったことは、採骨にRIAがまだ使用できないこともあり、腸骨に加え脛骨近位からも採骨されていたことです。この部位はあまり日本で使われないと思います。そして、採骨量をすべて計測し記録していることです。腸骨と脛骨近位では採骨量にあまり差はないということでしたが、脛骨近位を採骨し過ぎると術後に骨折を来すことが稀にあるということでした。しかし、骨欠損が多いときでは採骨部として有効と感じました。初日は手術がとても沢山あり、終了は夜20時でしたが、Fellowの先生に聞くと毎週月曜日はこれくらい延長するとのことでした。手術終了後は、Cho先生をはじめとする若手の先生方に韓国式バーベキューのお店に連れて行って頂き、韓国伝統のBomb Shot(韓国焼酎とビールのチャンポン)を数えきれないくらい頂きました。

 火曜日はOh先生の外来を見学させて頂きました。非常に面白いと思ったのは、外来チームはOh先生とシュライバーの若い先生に加え、検査をオーダーするスタッフが1名と患者さんの関節可動域の写真と駆け足やスクワット運動する様子を動画撮影するスタッフが1名の合計4名で行っているとのことでした。動画や写真はすべて学会活動で使用するためであり、特に動画は誰の目からみても公平に判断できるために非常に有用とおっしゃっていました。外来は3部屋を使用し、一人の患者さんを診ている間に次の患者さんを隣の部屋に待たせて、診察が終了すると次の部屋にスタッフが移動するというやり方でした。椅子に座るのはシュライバーの先生と患者さんだけで、Oh先生は基本的に立ちながら非常にフランクな雰囲気でにこやかに患者さんお話されます。外来で撮影した画像や動画は全てスタッフがコンピューターに保存するそうで、膨大な患者さんのデータ管理をスタッフが行い、効率的にデータを利用できるという非常に羨ましい環境でした。2日目もディナーに連れていって頂き、非常に上品な韓国の郷土料理が食べられるお店で食事を楽しみました。

 3日目の水曜日はお昼過ぎまで手術見学を行ったあと、Cho先生があらかじめ我々の為に予約してくれた世界遺産・昌徳宮のSecret Gardenの見学に行きました。Cho先生は手術があり同行できなかったため、Oh先生自ら連れて行ってくれました。昌徳宮まではOh先生自ら運転して連れていって頂きました。道中1時間ほど時間があったため、面白い話をたくさんして頂きました。特に感銘を受けたのはOh先生の英会話学習方法です。今ではネイティブスピーカー顔負けの発音と会話力をお持ちですが、レジデント期間を終えるまでは全く英語の勉強をしていなかったそうです。大学スタッフ向けの英会話教室に参加しても、一言も発することができなかったことが、強く英語を学ぼうという動機付けになったそうです。英語の学習方法は、通勤の車内で英語の教材を流し続け、それを沢山聞き、加えて同じような発音となるように大きな声でアウトプットする練習を繰り返したそうです。そうすることで、韓国人特有の英語発音(Konglishと呼ぶそうです)が克服され、非常にきれいな発音を獲得できたとそうです。この練習方法を1日も欠かさず現在まで続けているそうなので、ただただ頭が下がります。そして最終日もディナーがあり、この日はミシュランガイドに掲載されているフランス料理のレストランに連れて行って頂きました。建物は伝統的な韓国建築で、一見すると韓国宮廷料理のお店かと勘違いしてまいそうでしたが、ふるまわれる料理はどれも美味しく、楽しい時間を過ごしました。

 3日間のGuro HospitalでのFellowshipを終えた翌日の4月25日は45th Annual Meeting of Korean Fracture Societyに参加するため空路で釜山に移動しました。到着ロビーで日本から参加される沢山の先生方と合流し、釜山観光に出掛けました。日本に留学経験のあるバスガイドさんが、案内してくれたのですが、喋りがとても軽快で面白く、バス内では終始笑いっぱなしでした。

 KFSは釜山にあるコンベンションセンター、BEXCOで4月26日、27日の2日間行われました。BEXCOはとても巨大な建物で迷子になりそうなくらいでした。プレゼンテーションの会場は3会場のみで、学会自体はとてもコンパクトでした。しかし、プレゼンテーションの内容は興味深く、基礎研究から臨床研究まで韓国の整形外科外傷治療のレベルの高さを感じました。英語でのセッションが、必ずどこかの会場で行われているため、我々日本人も飽きることなく参加できました。私も骨盤の英語セッションで発表しましたが、とても沢山の質問をして頂きました。全体懇親会は釜山で水揚げされた蟹が食べられる大きなレストランで行われ、食べきれないくらいの沢山の蟹と、ここでもBomb Shotを沢山頂きました。韓国の先生方の勢いに終始圧倒されっぱなしでした。

 KFSが終了した翌日は、4月28日は4th Korean-Japanese Pelvic Acetabular Injury Conference2019に参加しました。場所は釜山港に隣接するコンベンションセンター、BPEXです。釜山港からは日本に向けて定期航路があり、日本との地理的な近さをここでも実感することができました。朝8時から昼食を挟み、昼2時まで1つの会場でレクチャーを含め約20演題を聴講しました。抄録集が準備されていたため、要点を把握しながら勉強することができました。学会終了後は後半のFellowship先であるKyungpook National University Hospitalの先生方と合流し、大邱に車で向かいました。この先の体験記は重本先生にお譲りすることにします。

 この度、韓国でFellowshipを行うにあたり韓国の先生方にはとても気さくに接して頂きました。また我々のFellowshipが順調に進むように、事前に色々なご配慮を頂戴し、無事に予定の日程を終えることができました。温かく重本先生と私を迎えて下さったKorea University Guro HospitalのJK Oh先生、Kyungpook National University HospitalのCW Oh先生、ならびにKorean Fracture Society事務局のKC Park先生には深く御礼申し上げます。またこの度fellowshipの機会を与えて頂いた日本骨折治療学会の先生方および2週間という長い期間にもかかわらず、快く送り出してくれた兵庫県立西宮病院の先生方にも心からの御礼を申し上げます。