医療従事者の方へ

フェローシップ

韓国・台湾 fellowship program レポート

台湾フェロー報告

岡山労災病院 整形外科
依光正則

2018年4月10日から13日までの4日間、台湾の高雄市(Kaohsiung city )にある義大病院(E-Da Hospital)におけるFellowshipを経験し、引き続き4月14日に同市において開催された台湾整形外科学会(Annual Meeting of Taiwan Orthopaedic Association)において発表させていただきました。

今回のFellowshipの目的は、台湾整形外科学会と日本骨折治療学会との親睦を深めるための第一弾としてE-Da Hospitalにおいて研修をおこなうというものです。
4月10日に関西空港から高雄国際空港への直行便に乗り、約3時間で到着しました。15時ごろには病院に到着し、容易していただいた寮に荷物を運んだ後に馬景候先生にご挨拶をさせていただきました。

火曜と金曜が馬先生の手術日であったことから、その日はすでに手術も終了しており、少し病院内を案内していただきました。機器は最新鋭のものが充実しており、手術室は60部屋ほど、病床は2500床の巨大な病院でした。夜には夕食をごちそうになり、その後、台湾マッサージで足の裏をこれでもかと痛めつけられたのちに寮に帰って初日は終了です。

翌日の水曜日は、馬先生は研究日にあてているとのことでしたが、合間に病院から車で10分ぐらいのところに位置する自宅に招いていただき奥様の手料理をごちそうになりました。自宅での食事は台湾独特の料理ではなく、サーモンソテーとパンという洋風の食事でした。
この日は多くの時間を寮で過ごしましたが、ベッドにはサイズの合わないベッドカバーが置かれており、テレビはつかないどころか、バチバチっという音とともに焦げ臭いにおいを発していましたので、それ以降はコンセントを抜いた状態で放置し、レジデントのエマソン先生が容易してくれたWifiのみが唯一の救いとなってくれました。

木曜は午前中外来を見学させていただきましたが、さまざまな患者が術後のフォローアップで外来を訪れます。馬先生は、外傷では全身外傷に加えてマイクロサージェリーも行います。さらには、人工関節や脊椎の椎体置換まですることに驚かされました。
入院期間も日本とは大きく異なります。骨折、人工関節の多くは2-3日で転院するというのは日本でもしばしばありますが、台湾のそれは少し異なります。ほとんどの患者は、2-3日で自宅に退院し、家族がケアをするとのことで、転院は少ないとのことでした。そして、偽関節に対してプレート固定をして、骨移植をしたとしても即全荷重させて歩いて帰らせておりました。外来にも偽関節手術後の患者さんが、自力で歩いて抜糸のために受診しており、それが原因なのか合併症率が少し高いな、という印象も受けました。
その日の午後は、台湾最大と言われる寺院と打狗英国領事館に観光に連れて行ってもらいましたが、回り切れないほどに大きな寺院に驚きつつ、日本と台湾の歴史に触れることができたのもよい経験でした。

最終日は手術日でしたが、翌日がE-Da Hospital主催の学会があるため件数は4例のみで、人工膝関節と骨盤骨折手術を見させていただきました。
4年目の優秀なレジデントがおり、彼は一人で人工関節を行っておりました。人工関節の適応は、レントゲンを含めた患者情報を審査する他院の医師に送り、審査が通らないと保険を使った治療はできないとのことでした。その日の症例は変形も軽度でしたので、まあ、それほど審査は厳しくはないのかなと思います。
ちなみに手術手技料は日本の5分の1程度であり、かなり安いと言っておられました。

土曜日には病院から車で30分ぐらいのところにある、大きなホテルで台湾整形外科学会が開催され、今回はProfessor Tu(E-Da HospitalのSuperintendent)がChairpersonとのことで、病院を挙げて準備をされておりました。
レセプションパーティーは盛大であり、骨折関連では日本から佐藤徹先生、土田芳彦先生、黒住健人先生が招待されており、他にも帝京大学から数名の医師が発表のために訪れておりました。馬先生は、レセプションの間もずっと私のことを気にかけてくださり、本当にお世話になりありがたく思います。
彼は日本と台湾の若手の医師がもっと交流を持てる場を増やしたいと考え、システム作りに尽力されているとのことで、可能な限りの援助ができればと思います。

整形外科学会員は2000人程度、会場は100人程度が収容できる部屋が6部屋、そして一日で終了しますので、日本と比べてかなり小規模の学会であることは言うまでもありません。 その中において、ピロン骨折に対する初期治療の検討という内容で15分間のプレゼンをさせていただきました。
また、佐藤、土田、黒住先生はAOTrauma symposiumでそれぞれ講演をしておられました。学会終了後には再びパーティーが開催され、500人以上の台湾整形外科医が集い、盛大なパーティーが行われました。
次回の学会にTaiwan Orthopaedic Trauma Association presidentとして来られるChang先生(写真中央 佐藤先生とともに)をはじめ多くの台湾整形外科医と知り合えたこともいい経験になりました。

このFellowshipを通じて、台湾の外傷整形外科医の強い団結力と若い世代が貪欲に上級医に絡んで、そこからさまざまなことを吸収しようとする姿勢に強い感銘を受けました。
日本骨折治療学会と異なり、小さな集まりであることから可能な面が大きいとは思いますが、見習うべき点も大いにあると思います。
貴重な経験をさせていただき、骨折治療学会会長ならびに各委員の先生方に感謝いたします。