医療従事者の方へ

フェローシップ

韓国・台湾 fellowship program レポート

日本骨折治療学会 韓国fellowship program 帰朝報告
『KFS and JSFR travelling fellowship program 2018:後編』

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 整形外傷外科治療開発学講座
講師 王 耀東

 九老(グロ)でよく学び、明洞(ミョンドン)と江南(カンナム)で十分に英気を養わせていただいた後、4月22日(日)に韓国高速鉄道KTXでソウルから大邱(テグ)に向かいました。東大邱駅で待ってくれていたフェローのDr. Kimは、まさに体育会系の好青年で、とにかく走ります。ゲストの待ち時間を1分1秒でも短縮させようという心意気に溢れていました。
 研修先近くのホテルにチェックインした後、新倉先生と夕食がてら市内散策に出かけました。大邱はB級グルメが有名なようで、大邱10味の一つ『チムカルビ(蒸した牛肉にたっぷりのニンニクと唐辛子で味付けしさらに蒸したピリ辛料理)』をホテルからほど近いチムカルビ通りの有名店で食しました。
 次年度以降も大邱を訪れる先生方がいらっしゃるようでしたら、チムカルビ以外の9味を選んでいただくことをお勧めし、日曜日の夜はダウンタウン(≒新宿歌舞伎町)以外のお店はほぼ閉まっており街中が真っ暗ということを申し送りさせていただきます。

 翌4月23日(月)~4月25日(水)の3日間、Prof. CW OhのもとKyungpook National University Hospital (KNUH)にて研修させていただきました。ほとんどの時間を手術室で過ごしましたが、その日に予定されている症例と、できれば行ってしまいたい症例のリストがホワイトボードに列挙されており、3-4室を適宜調整しながら進んでいきます。
 骨盤骨折など難易度の高い手術は原則Prof. CW Ohが執刀、比較的簡単な四肢ORIFは(日本の大学病院で言うところの)助教以上の医師が執刀もしくは指導のもとフェローが執刀、軟部組織の簡単なデブリドマンはフェロー以上が執刀というルールがあるようでした。ただしProf. CW Ohが非常に多忙で海外出張も多く、整形外傷のもう一人の教授が長期海外研修中であること、などの背景から整形外科教室の総力で整形外傷を回しているという印象が強かったです。普段はTHAを担当する股関節の教授が大腿骨転子部骨折の手術に入っていましたし、Prof. CW Ohが小児整形の大家でもあることから小児整形の教員(助教クラス)は基本的に外傷チームと行動を共にしていました。
 余談として、初日のOP室見学は手外科専門の女性医師Dr. Leeが細かく案内してくれましたが、韓国整形外科学会に所属している女性医師はなんと50名ほどしかいないとのことでした。

 Prof. CW Ohの外来を見学させていただく機会もありました。
 写真・動画撮影のサポートにレジデント1名がつきますが、基本的に教授1人でおおよそ70名の患者さんを1ブースで3-4時間かけて診察されており、crazyだと言っていました。とにかく忙しいcrazyな病院で、骨盤骨折手術もほぼ毎週2-3件あると嘆いていらっしゃいましたが、フェロー達は尊敬を込めて『professorの中のprofessor』と呼んでいました。私にとっても、臨床、学術、教育、人間性、ホスピタリティ、全てにおいて心から尊敬する偉大な教授と出会えました。

 大邱に到着するまで全く聞かされておりませんでしたが、AO Technical Commissions (AOTK)のExternal Fixation Expert Groupのミーティングが同時期に大邱で開催されたこともあり、Prof. CW Ohのご厚意で、同メンバーのProf. Slongo(スイス)、Prof. Hoentzsch(ドイツ)、Prof. Reid(USA)、Prof. Sepulveda(チリ)、そしてKorean Fracture Society (KFS) meetingに先立ってKNUHでの講演に招待されていたProf. Blauth(オーストリア)といった世界中の錚々たる先生方と非常に多くのprivate timeを共にしました。
 思いがけない出会いの数々、そしてかけがえのない時間を過ごすことができたのも、本travelling fellowship programの賜物であり、心より感謝申し上げます。

 4月26日(木)、早朝にProf. Blauthの講演を聴講した後、世界遺産の海印寺(ヘインサ)に立ち寄りつつ、KFS meetingが開催される最終目的地の光州(グワンジュ)に移動しました。学会前夜の会長招宴では、『ゴルフ酒』と言われる圧巻の爆弾酒(ビールが入ったジョッキに焼酎などアルコール度数の高いお酒の入ったショットグラスを落として作るお酒)パフォーマンスを堪能しました。

 4月27日(金)~4月28日(土)に開催された44th KFS meetingでは、本年度は特に海外からの招待講演が非常に多く、大邱からともに移動された前述の5名に加え、本年11月に帝京大学の渡部欣忍教授のもと京都で開催予定のInternational Society for Fracture Repair(ISFR)のChairでもあるProf. Hak(USA)、そしてProf. Phiphobmongkol(タイ)、また日本からも多くの先生方が招待されており(佐藤徹理事長を筆頭に、なんと総勢11名!!+fellow 2名)、いずれの講演も重厚かつ大盛況でした。私たちfellowも無事に発表を終え、fellowship programは終了しました。
 閉会直後の4月28日(土)~4月29日(日)に同地で開催されたAOTrauma Seminar-External fixator:an important tool in trauma careにも参加した後(私はguest speakerとして講演する機会までいただきました)、日本人10名とProf. Hakの全員でKTX降車駅を間違えつつも、無事に帰国となりました。

 今回、2週間を共に過ごさせていただいた大先輩の新倉先生と厚い契りを交わすことができたことも、この旅の大きな収穫でした。 新倉先生から出国前日に「明日から2週間、一心同体、一蓮托生で、いつも一緒、濃厚なお付き合いを宜しくお願い致します」(原文まま)とメールが届き、同体はちょっと勘弁と思いながら出国しましたが、僭越ながら『親友』にはなれたと信じています。

 最後に、このような素晴らしいtravelling fellowの機会を与えてくださったJSFRの関係者の皆様、圧倒的なおもてなし精神で迎えてくださったKFSの関係者の皆様、長期間の留守にも関わらず快く送り出してくださった東京医科歯科大学整形外科教室の皆様には、この場をお借りして深く御礼申し上げます。