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フェローシップ

韓国・台湾 fellowship program レポート

Korean Fracture Society and JSFR traveling fellowship program in Korea Daegu(大邱), Kyungpook National University Hospital(慶北国立大学病院)編

東千葉メディカルセンター
整形外科 副部長
中嶋隆行

 4月23日にKTX(韓国高速鉄道)にて第2の目的地、大邱に移動しました。東大邱駅で待っていたのは、ネームカードを掲げた陽気な先生方、そして通りかかった大学病院には救急センター前に救急車が列をなしていました。
 大邱の人口は約250万人の韓国第3の都市で、2011年には世界陸上も開催されています。高速道路が発達し交通量も多く、刺激的な運転のドライバーが多い印象があります。繊維化学工業地帯があり、韓国プロ野球のサムスン・ライオンズ、Kリーグの大邱FCの本拠地であることなど、ファッションやスポーツを中心に盛り上がっている街です。交通事故、工場、スポーツ、繁華街と整形外傷にとって四拍子そろった環境でした。

 4月24日から27日はKyungpook National University Hospital、Chang-Wug Oh教授のもと、fellowship programが行われました。朝7時からの整形外科総合カンファレンスは、research meetingであり、脊椎、関節、外傷の各チームから質量共に十分なスライドが用意されていました。8時からは、部屋を移動し、外傷チームのレントゲンカンファレンスとなりましたが、ここでも厳しい質疑応答、指示が飛び交っていました。若手は大変そうですが、手術までの90分を有効に使っていました。(写真1)
非常に感心したのは、手術室のマネージメントです。スマホを片手に手術室を行ったり来たりしている若手(research meetingで絞られていた先生)が、手術の進行状況を見ながら、入室時間、手術機械、スタッフの手配を行っていました。当日に来た外傷も、彼によって当日緊急手術に組み入れられていきます。そのためCW Oh教授は斜めに手術室を移動し、執刀を連続していました。教授は午前中に2件の下肢関節内骨折をこなした後、13時にはstoppaで寛骨臼を展開していました。(写真2)そして16時には、「用意しておいたぞ」と後外側rim platingを見せていただきました。(写真3)
 さらに感心したのは、どんどん組み入れられる症例に対する手術準備です。若手は体位をとり、最適な透視装置の位置を確認し、布をかけ、症例によってはアプローチまで完了して教授を待ちます。そこに「どーよ」と教授が現れます。おそらく助手の誰でも、その後の整復固定も容易にやってのけるだろうと思われる、的確な準備でした。CW Oh教授の教育理念を垣間見た気がしました。Chang-Wug Oh教授のチームは非常にToughでした。
 連日のtoughな手術のあとは毎晩の歓迎会で、いつの間にか友達でした。先生方のhospitalityに感激しました。(写真4)
 夕食の後、スタッフは病院に戻っていきます。今日の症例の経過観察と明日のカンファレンスの準備です。Seoul、Guro HospitalでのJK Oh教授のスタッフにも感じたことですが、大学病院に勤務する韓国の若手医師らは常に論文の準備をしています。今夜のレストランの地図を探すPCのウインドウの裏には決まってWordとExcelが立ち上がっていました。おそらく日々の症例は手術加療がゴールではなく、前向きな条件設定のもとの治療であり、結果をまとめて研究まで昇華させ、論文化することまでが徹底されていると感じました。韓国では整形外傷においても、教育、臨床と研究がシームレスであり、見習わなくてはならないと思いました。

 4月28日、総合カンファレンスにてBrazil Campinas州立大学のWilliam教授の早朝講演を聴講した後、最終目的地である世界遺産の仏国寺と石窟庵のあるGyeongjiu(慶州)に移動しました。
 Fellowship最後の目的は韓国骨折治療学会KFSでの講演です。学会に先立ち開催された歓迎会では、スケジュールは前後しましたが、共にfellowに来ていたThaiの先生方とも交流ができました。
 KFSは特別講演と演題のレベルが非常に高く、大変勉強になりました。日本からは兵庫県立西宮病院の正田悦郎先生、兵庫県立淡路医療センターの櫻井敦志先生、長崎大学病院の宮本俊之先生、北里大学病院の峰原宏昌先生、帝京大学病院の松井健太郎先生が特別講演をされ、私達fellowの応援にも駆けつけてくれました。おかげで、乾先生と共に発表も無事終えることができ、fellowship programが終了しました。(写真5)

 今回のfellowshipのバディは帝京大学外傷センターの乾貴博先生でした。研修の中で積極的に教授やスタッフと議論を交わす姿勢は見習うべきものがあり、2週間にわたり研修、トレーニング、宴会を共にできたことは、今回のprogramの中でも最高の思い出となりました。韓国最高峰の整形外傷病院で感じたことを、これからも共に発信していけたらと思います。

最後にこの素晴らしいfellowship programに参加させていただいた骨折治療学会関係者の皆様、快く送り出してくれた東千葉メディカルセンターの皆様に御礼申し上げます。