帝京大学整形外科 大学院生
京都大学公衆衛生大学院 医療疫学分野 特別研究学生
乾貴博
4月18日から29日まで東千葉メディカルセンターの中嶋隆行先生と共に、日本骨折治療学会と韓国骨折治療学会のTravelling fellowshipプログラムで韓国に行って参りました。ソウルのKorean University Guro Hospital・大邸のKyungpook University Hospitalをそれぞれ3日間見学し、韓国骨折治療学会の学術集会に参加して発表しました。私は前編としまして、ソウルでのプログラムについて報告させていただきます。
京都に住んでおりますので、私は関西国際空港から仁川国際空港へ向かい、中嶋先生と空港で合流しました。ホテルへ向かう前に、必ずやっておくべきことがあります。2週間も海外にいるのにネット環境がないと生活していけないので、SIMカードをゲットすることです。国際ローミングは高額ですし、Wi-Fiレンタルも機械が一つ増えて面倒。空港でプリペイドの返却不要な4G対応の使用量無制限のSIMカードが売られていますので購入すると便利です。街中では売っていないお得なタイプなので買って損はありません。
4月19日から21日はKorean University Guro hospitalのJong Keon Oh教授の元でのプログラムでした。韓国の有名私立大学である高麗大学の3つある附属病院の1つです。
毎朝7時から全整形外科医が集まってresearchの勉強会が行われていました。レジデント・フェローが所属するチームの領域の最新の話題についてプレゼンテーションをし、担当教授がコメントして若手全体のレベルアップを図っていました。
レジデントが透視係、フェローが術野準備、教授が執刀という体制で手術は9時前から開始です。手術の難易度によっては整復までフェローが行うこともありましたが、基本的には手術を執刀するのは教授です。夕食で我々を歓待していただいたあとも「緊急の骨接合があるから、戻ってやってくるよ」と、頭が下がります。上腕骨の骨接合術、足関節・大腿骨近位の変形癒合や大腿骨骨幹部の偽関節に対する骨切術などさまざまな手術をみせていただきました。このあとに訪れたKyunpook national university hospitalの先生たちもそうだったのですが、非常に手術が丁寧で、整復やアライメントミスは絶対許せないという意気込みで術中の透視装置を注意深く見ながら最後まで気をつけて手術されていました。
フェローたちはリサーチのプレゼンテーション作り・病棟や救急対応のマネージメント・論文作成をしながら勉強をすすめ、執刀するチャンスがまわってくる立場になるまで地道に頑張るようでした。日本のように、すぐ執刀できるわけではなく環境の違いを感じた一瞬でした。
Guro hospitalにはDepuy-Synthes社の寄付でできたTrauma laboが併設されています。豊富なソーボーン・インプラント類だけでなくLabo用の小さな透視装置まであり、定期的にハンズオン講習を行っているとのことでした。若手の執刀経験数が少ないのを補うことに役に立っており、非常に羨ましい環境です。
外来も非常に効率的なもので、横に繋がった4つの部屋を利用していました。フォローの患者が予め入室して待っており、フェローと共に経過・画像・可動域を確認し、ナースに歩行や可動域の動画を撮らせていました。詳しいフォローアップのデータはフェローがシュライバーとして入れていきます。1人あたり5分程度ですが、Oh教授は丁寧に患者をチェックしていき午前だけで40人ほどの患者を診察していました。手術はやりっぱなしにせず、今後の論文作成を見越して行っておられました。今後、日本のOrthopedic traumatologyが学問として成り立たせていくためのヒントが垣間見えました。日本のシステムのよいところを続けつつ、韓国のよいところを取り入れていきたいと、このプログラムで強く思いました。
中嶋先生はフェローに行く前から存じ上げており、臨床でも研究でも非常に精力的に活動しておられ以前から尊敬している先生でしたので、2週間共にプログラムに参加して非常に勉強になりました。毎日、ジムで一緒に汗を流したことも忘れることはないでしょう。
最後に今回のfellowship programに参加させていただいた骨折治療学会関係者の皆様と、快く送り出していただいた帝京大学整形外科および京都大学医療疫学分野の皆様に深謝致します。