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理事長挨拶

『一般社団法人 日本骨折治療学会 理事長 ご挨拶』

一般社団法人 日本骨折治療学会 理事長 渡部 欣忍

日本骨折治療学会会員の皆さまへ
理事長 渡部 欣忍

この度,伝統ある日本骨折治療学会の理事長にご指名いただきました帝京大学医学部整形外科学講座の渡部欣忍でございます.

日本骨折治療学会は,1978年に恩師である故 榊田喜三郎(京都府立医大名誉教授)先生が第1回骨折研究会を立ち上げられたのがルーツで,昨年に40周年を迎えました.前理事長の佐藤徹先生から大役を引き継ぎ,責任の重さを感じております.年号も平成から令和へ変わりました.新たな気持ちで,本学会の発展に力をつくしていきたいと思います.

学会ホームページの「歴史」のところをご覧下さい.「骨折研究会発足の頃」と題した榊田先生の文章がございます.今から約40年前には,骨折を中心とする整形外傷の多くが整形外科を専門にしない外科医により治療され,真っ当な医療施設や経験のある整形外科医により対応されていなかった惨状が述べられています.令和を向かえた現在,外科学の中で運動器疾患を扱う整形外科のidentityは,かなり確立したと思います.

一方で,骨折を中心とする整形外傷の手術件数は,整形外科関連手術の約半数を占めると推測され,「骨折治療は,整形外科の基本である」と言われているにもかかわらず,大学病院や教育病院の中には,整形外傷をしっかりと教育できない,あるいはするつもりがない施設がたくさんあります.その理由には種々のことが考えられますが,「骨折は若い医者がやる手術であり,脊椎外科や関節外科こそが整形外科の本流である」という考えをもった指導的立場の医師が多いのも一因でしょう.

整形外傷の治療は最先端の生物学・生体力学・外科解剖学の知識に基づいた技術を駆使しなければ,十分に満足できる治療成績を得ることはできません.整形外科手術の中でも,広く深い知識と豊かな経験・技術を必要とするのが,整形外傷の治療であることは本学会の会員の皆様には常識だと思います.整形外傷の研究および治療の両面において,日本骨折治療学会が果たす役割は益々大きいものとなっているといえます.

日本骨折治療学会会員の皆さまと理事の協力のもとに,以下にあげる項目に特に力を入れて活動していきたいと思います.

  1. 若手整形外科医に対する標準的治療の教育
  2. 最新の論文レビューによる整形外傷知識の共有
  3. 整形外傷レジストリーの管理
  4. アジアおよび欧米各国の整形外傷関連学会との関係強化
  5. 外保連活動のより一層の充実
  6. 骨転移による病的骨折の治療への積極的関与
  7. 学会・学術集会運営の財政見直し

当学会が年1回主催している研修会のベーシックコースでは,学会評議員の先生を中心にcommon fractureに対する標準的治療の講義をしてもらっております.2日間の座学ですが,骨折治療の標準的治療をまとめて学ぶ機会であり,非常に有意義な研修会になっています.アドバンスコースともども,教育活動の一貫として研修会を益々充実させていきたいと考えております.

根拠に基づいた医療の実践には,多くの臨床論文から知識を得る必要があります.今日,種々雑多な論文が発表されており,激務をこなしている整形外傷医が,その全てに目を通すのは不可能です.そこで,中堅・若手の会員を中心に最新の論文から重要なエビデンスを抽出し,毎年アップデートしてもらい,会員にフィードバックできるようなシステムを作りたいと考えております.

2020年から,日本整形外科学会で症例登録(JOANR)が開始されます.日本骨折治療学会では,開放骨折に対するレジストリーを数年前からすでにはじめております(DOTJ).また,寬骨臼骨折に対するレジストリーもはじまる予定です.当学会で行っているレジストリーは,単に手術症例数を把握するだけでなく,治療に要する医療資源や治療成績のフォローアップも考えたレジストリーです.治療法等に関するエビデンスを得るだけでなく,適切な保険診療のためのベースになるデータとしても活用できると思います.

この数年で,アジア各国の整形外傷関連学会との連携が著しく活発になってきております.若手・中堅の整形外傷医には,アジア各国との交流をより一層深め活躍していただきたいと思います.さらに,米国のOrthopaedic Trauma Association(OTA)がイニシアチブをとって,International Orthopaedic Trauma Association(IOTA,国際整形外傷学会)が設立されました.第1回の学術集会は,2020年12月にオランダのアムステルダムで開催されます.日本骨折治療学会もIOTAやOTAに積極的に関わっていきたいと考えておりますので,多くの学会員が参加してくださればありがたいです.2021年テキサスで行われるOTAは,日本がGuest Nationとして招待される予定です.

日本骨折治療学会では,かなり以前より外科系保険連合(外保連)に参加しております.骨折治療関係の保険点数が,最近,かなり適正化されていることに気づいている先生は多いと思います.これには,当学会の外保連委員会の地道な活動が大きな役割を果たしているのですが,ご存知でない先生が多いと思います.保険点数の適正化を通じて,本学会会員の施設内でのステータスが改善されるように,さらに充実した外保連活動を継続してまいります..

二人に一人が「がん」になる時代になりました.整形外傷医と「がん」診療は,かなり遠い関係と考える医師が多いと思います.私もその一人でした.がん免疫療法や分子標的薬の進歩により,現在は「がん」と共生する時代になっています.充実した人生を送るために,がんの骨転移による病的骨折や切迫骨折の治療を,整形外傷医が積極的にかかわっていく時期がきたと思います.そして,ここに関わっていくことで,がん診療を担当している主科に対しても私たちのプレゼンスを示せ,整形外傷医の地位向上にも貢献すると考えます.

最後に,学会・学術集会の財政について考える必要があります.日本骨折治療学会の活動をしっかり継続するには,各種委員会活動をはじめとして資金が必要になります.また,年1回の学術集会に対しても,これまでのように製薬会社や医療機器会社からの寄附・協力が得られにくくなってきております.継続可能な学会運営のためには,財政面についても考え直す必要もございます.理事・監事の先生方を中心に論議をつくして,よい提案を皆様にさせていただきたいと考えております.

令和元年9月1日

日本骨折治療学会理事長
渡部欣忍

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