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大腿骨骨幹部骨折

鈴木 雅生(順天堂大学医学部附属浦安病院整形外科 外傷再建センター)

【はじめに】

大腿骨骨幹部とは大腿骨の真ん中を指します(図1)。この部分が骨折した場合に大腿骨骨幹部骨折と呼びます。
ケガの仕方は成人、小児、高齢者で大きく異なります。成人は、交通事故や転落などの極めて強い外力の作用により生じる場合(高エネルギー外傷)が多く、ケガをした直後は激しい痛みがあり歩行困難となります。また、高エネルギー外傷でその他の部位(四肢など)の骨折や他の外傷(頭部、胸部、腹部)を伴うことも多く注意が必要です。
小児(特に5~6歳以下)では強い外力で生じる骨折であり稀です。したがってこれらがみられる場合は交通事故や転落、虐待などが多い傾向にあります。 高齢者の骨折は転んだりつまずいたりするだけで骨折してしまうこと(軽微な外傷)が多いです。高齢者の場合は持病(合併症)を多く抱えている方も多いため、手術を行う前に全身の検査をしたうえで手術を行うことが奨められます。

図1 大腿骨の部位の名称

図1 大腿骨の部位の名称

【症状】

大腿部に強い痛みがあり、歩行はできません。
大腿骨に付着している筋肉の作用により骨折部が大きくずれて、明らかな変形がみられます。 足は外側に向いていて短縮していることが多いです。

【検査と診断】

検査方法はまずレントゲン撮影を行います。 レントゲン撮影は2方向から撮影し、骨折の有無を確認します。 高エネルギー外傷の場合は全身のCTを撮影して他の怪我がないかの確認をすることもあります。
大腿骨骨幹部骨折は豊富な筋肉で覆われており血流が多いため、一度骨折すると 500ml~1000ml程度の出血が予想されます。 血液検査などで貧血の程度などを評価し、必要な処置(点滴や輸血)を行います。

【治療法】

成人では十分な骨癒合まで時間を要し、それに伴う長期臥床となります。 保存加療でも骨癒合は得られますが、長期の臥床を余儀なくされ、それによる合併症(肺、心臓機能の低下、深部静脈血栓症(エコノミー症候群)を起こしやすく、また下肢の筋萎縮をきたし股関節、膝関節の可動域制限を生じるため基本的には手術が薦められます。
標準的な治療法は骨髄のなかに太い釘を挿入して、上下に数本のネジでしっかりと固定する方法(髄内釘)が一般的です(図2)。 この方法では、手術後数日より疼痛に応じて松葉杖や車いすを使用して移動することが可能になります。 骨折の状態によってはプレートとネジで固定する方法もあります。

図2:16歳男性(受傷時、術後、1年後:良好な骨癒合が得られている

図2:16歳男性(受傷時、術後、1年後:良好な骨癒合が得られている)

また、開放骨折(骨が皮膚の外に飛び出してしまった骨折)やほかの部位に重篤な外傷があったり全身状態が悪いときは、大きなネジを骨折の上下に通して体外で連結させ骨折部を安定させる創外固定を行います。創外固定を行った場合は1~2週間程度をめどに髄内釘に変更する手術を行います(図3)。

図3:18歳男性(受傷後、一時的創外固定、内固定術後)

図3:18歳男性(受傷後、一時的創外固定、内固定術後)

小児は骨がつくのが早く、多少の変形は矯正されることが多いので牽引療法やギプス固定などの保存的治療が選択されます。 しかし、10歳以上では自家矯正能力が働きにくくなったり、ADL障害(保存療法によるベッド上での安静期間が長くなったり、ギプス内での転位が強くなったりする)を生じるため手術療法が選択されることも増えてきています。
小児に対する手術法としては、創外固定法や金属の板で骨折部を固定する方法(プレート固定)、骨髄の中に細い金属の棒を入れる方法(髄内釘)が選択されます(図4)。

図4:11歳 男児 交通事故 髄内釘(Ender釘)固定症例(受傷時、術後、術後4か月)

図4:11歳 男児 交通事故 髄内釘(Ender釘)固定症例(受傷時、術後、術後4か月)

中学生以上であれば、除痛、早期復帰、骨が曲がってつくのを予防する(変形治癒予防)ために手術を行います。

【合併症】

出血:

大腿骨骨幹部骨折は骨折した時点での出血が500~1000ml程度生じます。適宜採血などを行い貧血が進行場合には輸血が必要になることがあります。

感染:

閉鎖性骨折(骨が皮膚から飛び出さない骨折)にくらべて、開放骨折(骨が皮膚から飛び出した骨折)では感染のリスクが高くなります。

偽関節、遷延癒合:

大腿骨骨幹部骨折は血流が豊富で比較的骨が付きやすい骨折ですが骨癒合が遅れたり、得られない可能性があります。開放骨折や粉砕骨折では手術直後より必要に応じて超音波骨折治療を併用することがあります。骨の癒合傾向が見られない場合や進行が遅い場合には経過を見て骨癒合を促進するための手術を行うこともあります。

変形癒合:

骨折の程度や状態によっては変形して癒合することがあります。また小児では、成長につれて足の長さの違いがみられることがあります。通常は骨折した下肢のほうが長くなりすぎることがあります(このことを過成長といいます)。骨折癒合が得られたのちも骨の成長が終了するまでは定期的な診察を受ける必要があります。

深部静脈血栓症:

骨折した影響や長期のベッド上の安静などにより凝固した血液の塊(血栓)が下肢の血管に生じることがあります。手術中や手術後にこれらの血栓が飛んで肺の血管などに詰まってしまうことがあります。命にかかわることが多いため手術前後に血栓を予防するストッキングやフットポンプの使用、血を固まりにくくする薬を使うことがあります。

脂肪塞栓症:

長管骨の骨折もしくは軟部組織の広範な挫滅を伴う外傷の場合に脂肪組織が遊離し、血管もしくはリンパ管内に流入して肺や脳の循環障害を来たすことがあります。治療方法は対症療法が中心となります。

【術後の経過】

術後は大腿骨の創部から膝関節まで疼痛、腫脹、熱感などが生じるため, アイシング、挙上、弾性包帯の圧迫などを行います。膝関節、股関節の可動性を得るために術後早期より関節可動域訓練や筋力強化を中心としたリハビリが必要になります。
患部の荷重は、骨折の状態や固定方法で変わってきます。荷重時期や歩行、運動に関してはレントゲン検査などを踏まえ主治医と相談し判断します。

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