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小児上腕骨顆上骨折

池上 博泰(東邦大学医療センター大橋病院)

上腕骨顆上骨折は主に3~8歳の小児に生じる骨折で、小児の肘の骨折の中では、過半数を占めて最も頻度の高い骨折です(図1)。

図1.上腕骨顆上骨折

図1.上腕骨顆上骨折

受傷原因は、90%以上が転落や転倒の際に肘を伸ばして手をついて受傷しています。 小児の上腕骨顆上部は骨皮質(骨の表面を構成する硬くて緻密な部分)が薄くまた骨の断面積も小さいので、強い力が集中すると折れやすいのです。

【どういう症状?】

図2.上腕骨顆上骨折例の皮下血腫

図2.上腕骨顆上骨折例の皮下血腫

肘の周囲に強い痛みがあり、そのため肘を動かすことができません。 受傷から時間が経って骨折部のずれ(転位)が大きいと、皮下に血がしみ出て変色します(図2)。

ときに骨折部のずれが大きいと神経の損傷(しびれや麻痺)や血管が傷つくことがあり、治療が大掛かりになります。

【診断】

診断は、受傷時の状況を聴き、診察し、X線写真を撮って行います。
ずれの大きい例では、X線写真で容易に診断がつきます。
しかし、ほとんどずれがない場合には、注意深い診察をしないと上腕骨外顆骨折や肘内障などと間違うことがあります。

【治療はどうするのか?】

骨折のずれが小さければ、ギプスや半ギプスを3~4週間装着します(図3)。

図3.ずれが小さい例でのギプス固定

図3.ずれが小さい例でのギプス固定
a.正面像    b. 側面像   

骨折のずれが中等度の場合には、ずれを戻した上で、ギプス装着や時に入院して全身麻酔をかけ、皮膚の上から鋼線を刺す手術(経皮鋼線固定術)が行われます。
骨折のずれの大きい場合は(図4)、皮膚の上から鋼線を刺す手術、あるいは皮膚を切開して骨のずれを元に戻して鋼線を刺す手術が行われます(図5)。
時に、肘関節の腫れが著しい場合には、入院して折れた上肢を牽引し、腫れがひくのを待ちます。
待つうちに骨折のずれが戻り良い位置になれば手術せずにギプス固定に切り替えますし、ずれが戻らなければ手術をする必要があります。

図4. ずれが大きい例

図4. ずれが大きい例
a.正面像      b. 側面像

図5.鋼線固定

図5.鋼線固定
a.正面像      b. 側面像

また頻度は少ないのですが、時に肘から手にかけて血の流れが悪くなることがあります。
これには、ずれた骨が動脈を直接圧迫して生じる場合と、著しく腫れた筋肉が動脈を押しつぶして生じる場合(コンパートメント症候群)があります。
血流不良を放置すると前腕の筋肉が壊死してしまう(フォルクマン拘縮)ので、必要な治療を遅れずに行う必要があります。

【治療後に問題となることがあるか?】

骨折がつかない(癒合しない)ことはほとんどありません。
ずれたまま骨がつくことがありますが、多少のずれは問題ありません。 しかしずれた結果として、上肢が肘で横方向に15度以上曲がると(内反肘変形)、見かけが悪いだけでなく、やがて上肢の機能が障害される可能性があり、追加の治療を検討することがあります(図6)。

図6.左上腕骨顆上骨折後の内反肘変形

図6.上腕骨顆上骨折後の内反肘変形

また頻度は非常に少ないですが、上腕骨顆上骨折後に、上腕骨の一部に成長障害(上腕骨滑車の無腐性壊死)が生じたために、肘関節が変形することもあります(図7)。

図7.左上腕骨顆上骨折後の滑車無腐性壊死例

図7.左上腕骨顆上骨折後の滑車無腐性壊死例
a.同じ患者の反対側で正常   b.患側(矢印が病変部)

実際に骨折した場合は、病院により治療法が若干異なる可能性がありますので、担当の整形外科の先生とよく相談してください。

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