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骨折の解説

上腕骨骨幹部骨折

前川 尚宜(奈良県立医科大学 救急科(整形外科))

上腕骨骨幹部とは?

上腕骨とは肩関節と肘関節の間をつなぐ骨で、骨幹部とはその中央部にあたります。

どのようにして折れるのか?

上腕骨骨幹部骨折は多くは交通事故などの大きな力がかかると生じます。 また投球動作や腕相撲のように、上腕骨に大きな捻じる力が瞬間的に加わることでも発生します。 比較的若者の発生が多く、腕相撲で負ける際に発生することも多いので,負けそうな時は気を付けましょう。

図1

投球骨折・腕相撲骨折→らせん状の骨折になります

どんな症状?

上腕部での疼痛、変形、不安定性があります。 骨折した部分の骨が皮膚をつきやぶり開放性骨折となることもあります。 また手指がつめたい、色調が悪いなどの症状があれば血管損傷などを考えます。

どういう検査をするのか?

変形などの症状で診断がつきますが、まず病院ではレントゲン写真を撮ります。 そのレントゲンをふまえて治療方法を考えます。 なお血管の損傷が疑われるときなどは超音波検査や造影剤を用いた検査を行うことがあります。

治療はどうする?

他の骨折と同様、保存的治療(ギブスや装具などで治療する)と手術があります。

1. 保存的治療

初期は三角巾と胸部固定バンドを使用して上肢全体を体幹に密着する方法や、脇の下から手部までギブスをまいてその重みで整復するハンギングキャスト法などがあります。 ただしこれらの方法だけでは肩関節や肘関節が固まってしまうことがありますので、途中でファンクショナルブレースという装具に変更して、肩や肘などの運動をしつつ治療をすすめることもあります。

2. 手術的治療

プレートや髄内釘(芯棒を入れる)などの手術療法があります。 どのような手術方法が良いかは骨折の場所や状態などを見て判断します。 手術は全身麻酔で行われることが多く入院が必要になります。 ただし血管損傷を疑う場合や開放骨折などでは緊急の対応が必要ですので、それらが可能な病院への転院が必要となることもあります。

図2

さまざまな手術療法

上腕骨骨折の合併症について
1. 橈骨神経麻痺

橈骨神経とは指を伸ばしたり、手を手の甲側に引き起こす筋肉の運動にかかわります。 骨折した部分で神経が引っ張られたり圧迫されたりすると、手が垂れ下がったままになってしまいます。 また親指の付け根周辺のしびれや知覚低下などが発生します。 自然回復することが多いですが、損傷の評価のために骨折の手術を行う際に神経を確認することもありますので担当医とよく相談してください。

2. 偽関節

骨折した部分で骨がつかないことです。 これに対しては、よその部位より骨を移植する方法や内固定をやり直すなどの追加手術を行うことがあります。

さいごに

保存的加療も選択肢になる骨折ですが、日常生活での支障、手術療法の長所や短所などを担当医と十分相談していただき治療法を選択してください。

2016年6月