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骨折の解説

突き指 -たかが突き指、されど突き指―

池田 和夫(金沢医療センター 整形外科)

突き指は、日常よく見られる指の外傷の総称のひとつです。
スポーツ、特にボールを使った競技などで発生します。

指に対してまっすぐの方向(長軸方向)に力が働くと、末節骨(一番先端の指骨)または中節骨(2番目の指骨)に損傷が生じることがあります。 「腱や靱帯」が損傷されると、脱臼や関節が不安定な状態となり、「骨」が損傷されれば骨折となります。 両者が同時に損傷されると、脱臼骨折ということになります。
突き指の中には、このように正しい診断と治療が必要な損傷が紛れ込んでおり、レントゲン検査などを用いた医師の診察が必要です。

突き指をしたら、まず冷却をしましょう。 最近はスポーツの現場で氷や冷却用のジェルなどを準備することが普及しています。 そして、無理やりに引っ張ったりしないで、整形外科を受診しましょう。 骨折や靱帯損傷がなければ、ひと安心です。

しかし、何らかの異常が発見されれば、それに対する処置が必要になります。
こういった外傷というのは、早期であれば治療もしやすく、あとあとの後遺症も少なく済むものです。
これを、日数がたってから受診して診断がついたとしても、後遺症が残る場合があります。 週末の楽しいはずのスポーツ活動を、後悔に換えないためにも、突き指をしたら少なくとも休日明けには整形外科の受診をお勧めします。

ここでは、治療の必要な突き指について解説します。

1) 腱性槌指(けんせいつちゆび)

これは突き指により、末節骨に付着している伸筋腱(指を伸ばす腱)が断裂することにより、末節の関節が伸ばせなくなる状態です(図1)。
外観が「槌:マレット」に似ているので、このような名前がつけられました(図2)。
X線写真で骨折がないことを確認することが必要です。末節の関節をまっすぐな位置で固定することが必要です。
指を伸ばす腱はとても薄いので治るまでに時間がかかります。 途中で固定をやめてしまうと、腱は伸びたまま治り、末節の関節はしっかり伸ばすことができないままになります。 しっかりと、6週間の固定を継続することが大切です(図3)。

図1

図1

図2

図2

図3

図3

2) 骨性槌指(こつせいつちゆび)

これは伸筋腱が末節骨に付着している部分で、裂離骨折を生じることにより、末節の関節が伸ばせなくなる状態です。 X線写真で骨折が確認されます(図4)。
同じ突き指と思っても、これは骨折ですから骨接合する手術が必要です(図5)。
約5週間固定して、骨癒合が完成したらピンを抜きます。

図4

図4

図5

図5

3) 中節骨骨折

長軸方向の力が中節骨(2番目の指骨)にまで伝わってから骨折を生じると、中節骨頚部骨折となります(図6)。
多くは、手の甲がわに転位(ずれ)します。これも、正しいX線診断の後に、整復して骨接合を行います(図7)。

図6

図6

図7

図7

4) PIP関節脱臼骨折

長軸方向の力が中節骨(2番目の指骨)の基部にまで伝わると、PIP関節で脱臼骨折を生じます(図8)。
関節に骨折が入るので、治療が困難です。
特に治療までに日数がかかると、後遺症を残しやすいので、早く整形外科を受診すべき外傷です。
ピンで固定したり、スクリューで固定したりと、脱臼骨折の形態により治療は変わります。

図8

図8

2013年6月