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下腿の骨幹部骨折

岸本 正文(大阪府立中河内救命救急センター)

【はじめに】

下腿というのは膝関節から足関節(足くびの関節)の間の脛(すね)と呼ばれる部位のことです。
骨としては内側にある太い脛骨(けいこつ)と外側にある細い腓骨(ひこつ)とがあります。
下腿での骨折は膝から足くびに至るまでいろいろな場所に発生しますが、骨幹部骨折とは中央部付近に生じた骨折のことです。 数ある骨折の中でも治療が難しい骨折として位置づけられています。

【特徴】

人間の骨は筋肉に囲まれていることが多いですが、脛骨の前から内側にかけては筋肉がなく、皮膚の下に直接骨を触れることができます。 そのため脛骨が骨折すると,骨折部の端は鋭利な刃物のような状態になって容易に皮膚を突き破り,骨折部と外部とがつながった状態になりやすいです。 このように骨折部付近に創(切り傷や裂け傷)があり、骨折部と外部とがつながった骨折を開放骨折と呼びます。 開放骨折は感染(化膿すること)の危険性があり、ひとたび骨が感染すると治療が非常に困難となります。 なお,骨が感染することを骨髄炎と呼びます。
また,骨折が治るには骨折部周囲の血流が豊富なことが重要ですが,脛骨の下半分は、筋肉が腱に移行する部位のため骨周囲の血流に乏しく,その部での骨折は治りにくいことが知られています。

【原因】

交通事故、スポーツ中の事故、仕事中の事故、などの強い外力で発生することが多いです。
しかし、転倒しただけで生じることもあります。

【合併症】

骨折の合併症として、神経や血管の損傷があります。
足のしびれや皮膚の冷感(触れても暖かくない)がある場合は要注意です。

コンパートメント症候群という合併症もあります。
筋肉は血管や神経とともに,骨と筋膜(筋肉の外側の膜)と骨間膜(脛骨と腓骨の間にある膜)で囲まれた部屋の中に入っています。
この部屋をコンパートメント(筋区画)と呼びます。
骨折が生じると、内出血や筋肉の腫脹(はれること)によってコンパートメントの中の圧が上昇します。 さらに圧が高くなると、コンパートメントの中にある血管や神経が圧迫され、血流障害や神経麻痺が発生することがあります。 その病態をコンパートメント症候群と呼び、症状としては疼痛(痛み)、皮膚蒼白(皮膚の色が青白くなる)、脈拍消失(足の脈が触れなくなる)、しびれ、麻痺などがあります。
脈拍消失は末期の症状なので、他の症状から早期に発見することが重要です。

【治療法】

様々な治療方法があり,年齢、転位(ずれ)が大きいか小さいか、全身の状態、体の他の部位の外傷の有無、開放骨折であれば創の状態などによって治療方法が決まります。

保存療法にはギプス固定、副子(シーネ)固定、牽引(ベッド上で長期間引っ張って治す方法)などがあります。

転位が大きい場合は手術療法が好んで行われています。
手術としては、髄内釘という金属性の棒を骨の中に挿入して骨折部を固定する方法が主として行われています(図1)。
しかし開放骨折では、感染を防ぐために創の処置が優先され,創の状態が不良(汚染がひどいなど)であれば創外固定と呼ばれる方法を用いることが多いです。 創外固定とは、骨折部から離れた部位に鋼線を挿入し、その鋼線を体の外で連結して骨折部を安定させる方法です(図2)。

合併症に対する手術が必要となる場合もあります。 血管損傷を合併したなら、早急に血管をつなぐ手術が必要で,手遅れになると切断が必要になることもあります。 コンパートメント症候群は早期に発見することが重要で,圧が高すぎる場合は筋膜を切開してコンパ―メントの圧を下げる手術(筋膜切開)を行います。

図1.髄内釘

図1.髄内釘による骨折部の固定

図2.創外固定

図2.創外固定

【おわりに】

下腿の骨幹部骨折はさまざまな年齢の方に発生し,折れ方は多彩で,治癒に至る道も一様ではありません。
個々の患者さんに最適な治療法を一概に言うことは出来ません。

詳細は担当の医師に質問されることをお勧めします。

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