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骨折の解説

肩鎖関節脱臼

倉田 慎平(奈良県立医科大学付属病院 整形外科)

肩鎖関節脱臼とは

肩鎖関節は鎖骨と肩峰(肩甲骨の一部)の間に存在する関節です.
肩鎖関節は肩鎖靭帯,烏口鎖骨靭帯という靭帯および三角筋,僧帽筋という筋肉によって安定性を獲得しています.(図1

図1.肩鎖関節の構造

図1.肩鎖関節の構造

ラグビー,柔道などのコンタクトスポーツでの衝突時や,交通事故(バイクや自転車)による転倒時に肩を外側からぶつけた際に靭帯や筋肉を損傷することで肩鎖関節に不安定性が生じ肩鎖関節脱臼に至ります.

症状

肩鎖関節の安静時の痛み,抑えたときの痛み,肩関節を動かしたときの痛みやだるさがみられます.脱臼の程度が強い場合は鎖骨が皮膚を押し上げるように突出します.

分類と手術適応

肩鎖靭帯,烏口鎖骨靭帯,三角筋,僧帽筋の損傷の程度によって肩鎖関節脱臼の重症度が変わります.ロックウッド分類という分類が広く用いられ,損傷が肩鎖靭帯にとどまるものは脱臼の程度も軽くType1,2に分類され保存的加療が選択されます.
逆に肩鎖靭帯,烏口鎖骨靭帯及び三角筋,僧帽筋の損傷を伴うものはType4~6(鎖骨がずれる方向によりTypeが異なる)に分類され基本的は手術加療の適応となります.

Type3は肩鎖靭帯,烏口鎖骨靭帯損傷があるが筋肉の損傷がないものとされています.若年でスポーツをしているような患者さんでは手術加療を考慮するとされていますが中高年者では保存加療を選ばれることも多いです.

治療法

保存加療を選択する場合は,基本的には安静加療とし三角巾を3週程度装着します.腫れや痛みが取れた時点で肩関節の可動域訓練は開始します.Type3では損傷の程度が強いためコンタクトスポーツや重量部を持ち上げたりする動きは2ヵ月間の制限する必要があります.

手術療法

手術治療は医療機関ごとに異なるため統一した方法は無いため,主治医の得意な方法が選択されることが多いです.以下に代表的な治療法を提示します.

①フックプレート固定
図2のように,上方に大きく跳ね上がった鎖骨を肩鎖関節関節をまたいだフック付きの金属プレートで抑える固定法で,日本では最も一般的な方法です.関節をまたぐ固定になるのでプレート固定している間は肩関節の可動域制限が必要になります.3~6か月ほどで抜釘(インプラント除去)の手術が必要になります.プレート固定している間に損傷した靭帯や軟部組織が治癒もしくは,瘢痕化するためプレート抜去後も肩鎖関節の安定性は受傷後よりも大きく改善します.

図2.肩鎖関節脱臼受傷時(左)、フックプレート固定後(右)

図2.肩鎖関節脱臼受傷時(左)、フックプレート固定後(右)

②烏口鎖骨間固定
突起(図1を参照してください)との間で固定する方法です.特に金属製のボタンと人工の靭帯を用いた方法が増えてきています.この方法では術後は1ヵ月程度三角巾固定しますが,それ以降は特に制限事項は無く,基本的に抜釘は行いません.骨質が良くない高齢の患者さんでは適応外になり,専門性が高い治療法であるため主治医と相談し治療法を選択する必要があります.

図3.肩鎖関節脱臼受傷時(左)、ボタンとテープによる固定後(右)

図3.肩鎖関節脱臼受傷時(左)、ボタンとテープによる固定後(右)

2025年12月