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骨折の解説

前腕の骨幹部骨折

高畑 智嗣(JAかみつが厚生連 上都賀総合病院 整形外科)

【部位】

肘と手首の間を前腕と呼び、前腕には細長い骨が2本あります。1本は橈骨(とうこつ)と言い、手首の母指(親指)側に、肘の外側にあります。もう1本は尺骨(しゃくこつ)と言いで、手首の小指側に、肘の内側にあります。 橈骨と尺骨はまとめて前腕骨と呼ばれ、両骨とも両端は肘関節と手関節(手首の関節)を形成して太くなっており、中間の細い部分を骨幹部と呼びます(図1)。この骨幹部の骨折が前腕の骨幹部骨折です。

図1

図1.右手〜前腕を前方から見た図。

【症状】

前腕の骨幹部で骨折すると強い痛みがあり、やがて腫脹が出現します。橈骨と尺骨がともに折れると、通常は骨折部で大きく変形します。橈骨か尺骨の一方のみの骨折では、あまり変形しないこともあります。

【生じ得る合併損傷】

骨が折れるほどの強い力がかかると、骨以外の組織も損傷する恐れがあります。皮膚にキズができ出血することがあり、そのキズが骨折部につながっていれば開放骨折と呼ばれます。開放骨折の場合は、骨折部に体外の細菌が進入する恐れがあるため、治療が格段に複雑になります。皮膚に傷が無くても、血管が傷ついて手の血流が悪くなったり、神経が傷ついて手の感覚や指の動きが低下することがあります。また、肘関節や手関節の脱臼を伴う事もあります。そのうち、尺骨の骨幹部骨折に橈骨の脱臼を合併したものはモンテジア骨折と呼ばれ、肘関節での脱臼になかなか気付かないことがあります。

【治療】

救急処置としては、痛みをやわらげ内出血を止める目的で、上腕から手まで副子(副木またはシーネ)をあてて骨折部の動きを抑制します。皮膚に傷がありそれが骨折部につながってそうな場合は、すぐに整形外科か救急病院を受診する必要があります。手の血流が低下したり神経が傷ついた場合も同様です。これらの場合は緊急手術を要することがあります。
前腕の骨幹部骨折の治療で重要なのは、変形せずに骨癒合させることです。変形して骨癒合すると、前腕の回旋運動(肘を動かさない状態で手のひらを返す動き)が制限されることがあります。また、橈骨と尺骨の長さに不均衡が生じて骨癒合すると、手首が痛くなることがあります。なお、この骨折の骨癒合には時間がかかる事が多く、時に骨がつかない事もあります(偽関節といいます)。
小児の場合は、骨折部が折れ曲がっただけだったり、骨折部のズレが小さい事が多いです。また、小児は骨癒合する能力が高いだけでなく、たとえ変形して骨癒合してもそこから本来の形に戻ろうとする能力があります。したがって小児では保存療法(手術しない治療方法)が成功する事が多いです。保存療法では、変形を出来る限り矯正し、上腕から手までギプスまたは副子(副木またはシーネ)を当てて固定します(図2)。小児でも骨折部のズレが大きい場合は手術をすることがありますが、骨折部の皮膚は切らずに、肘や手首から鋼線や金属棒を挿入することが多いです(図3)。大人の場合は手術することが多いです。骨を正確に本来の形状に戻すために、手術では骨折部の皮膚を切ってプレートと骨ネジで固定することが多いです(図4)。

図2

図2.小児の骨折。変形を矯正しギプスで保持して骨癒合した。

図3

図3.小児の骨折。骨折部のズレが大きかったので鋼線を刺入した。

図4

図4. 大人の骨折。プレートと骨ネジで固定した。

この骨折では、手や指を動かす筋肉が骨折部で周囲と癒着する事があり、そうなると手首や指の動きが悪くなります。 そのため保存療法であれ手術療法であれ、手首や指を動かすリハビリテーションが重要です。 また、折れた腕を動かさないようにしていると、肩関節が固くなってしまうので、肩のリハビリテーションも重要です。
ところで手術した場合、骨癒合後は内固定金属は不要となるので抜去することが多いですが、成人でプレートを用いた場合は、プレートの抜去の時期が早いと同じ場所で再骨折することがあります。そのためプレートの抜去は最初の手術から1年半以上待たされることが多いです。
以上述べましたように、前腕の骨幹部骨折はなかなか厄介な骨折です。 順調にいっても完治まで時間がかかりますし、順調にいかない事もあります。 担当の整形外科医とともに、治療にじっくり取り組んで下さい。

2025年12月