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骨折の解説

肘頭骨折

森川 圭造(森川整形外科医院)

肘頭は、肘関節の後方にあり、肘を曲げた時に突出する硬い骨のことです。人の体の「うで」にあたる前腕部には、尺骨(しゃっこつ)と橈骨(とうこつ)と呼ばれる2本の骨があり、尺骨の肘に近い端のことを肘頭と呼びます。
この肘頭の役目は、肘の要として存在し、前腕(うで)と上腕と呼ばれる二の腕(かいな)を繋ぎ、関節運動に重要な役割を果たします。

肘頭骨折は、転んで肘をぶつけた時や手をついた時などが原因で、骨折すると言われています。
肘頭が骨折すると、そこに付着している上腕三頭筋という上腕の後ろに存在する太い筋腱によって引っ張られ、肘頭がずれてしまいます(図1-a)。そうなりますと、肘の動きが損なわれ、そして肘の当たりが激しく腫れ、押さえると非常に痛みを感じるようになります。
場合によっては、肘のあたりに窪みを触れることができ、骨が折れているのがわかることがあります。

肘頭骨折の治療は、手術を行わない保存療法と手術を行う手術療法の2つがあります。
保存療法は、肘頭が骨折しても、折れた骨があまりずれていない場合に行われます。具体的には、上腕(かいな)から前腕部(うで)と手まで、肘を少し曲げた状態で、ギプスなどを用いて固定します。もし過度に肘を曲げてしまうと骨のカケラが引き裂かれ、痛みが強くなるので注意が必要です(図1-b)。ギプスは、一か月程度固定します。そして骨折が治った直後から肘の曲げ伸ばしのリハビリテーションを行います。
手術療法は、肘頭が骨折して、骨のかけらが引き裂かれた場合に必要です。
一般に、小さなかけらによる骨折が多いので、細い針金を巻き、鋼線や骨ネジなどを用いて固定する方法が良く行われています(図2)。また骨折した骨のかけらが、細かく裂けている場合や、怪我した方が高齢の場合、あるいは脆い骨による骨折の場合は、金属のプレートを用いる方法も行われています(図3)。
この二つの固定方法によって肘周辺の筋肉、特に上腕三頭筋の強く引っ張る力に対抗して、骨折した肘頭が引き裂かれるのを防ぐことが出来ます。
これによって早々に肘の曲げ伸ばしや力仕事も出来、治療後のリハビリの時間を短縮させる長所を持っています。

図1 a: 受傷時の肘頭骨折。折れた骨のかけらが引き裂かれている。
  b: 固定の際、肘関節を過度の曲げると骨折した骨のかけらが引き裂かれる。

図2 細い針金を巻き、鋼線や骨ネジを用いて骨のかけらを固定する。
(テンションバンド固定法 https://www.aofoundation.org)

図3 金属プレート固定法(https://www.aofoundation.org)

このように肘頭を骨折したと思われる場合は、まず応急処置として、肘を少し曲げた状態にして、応急処置用の副木などで固定し、肘が動かないように努めてください。そして肘の回りを氷か冷水で冷やしてください。その後、専門医に相談をし、その治療方針を決めていただくのが最良と思います。

2025年12月