鎖骨とは首のすぐ下の胸の上前面にある皮膚から触れやすい骨で左右対称のS字型をした骨です。この鎖骨が折れる骨折は、全骨折中約10%を占めるほど多い骨折のひとつです。
原因はスポーツや交通事故による転倒などによって肩や腕に衝撃力を受けて折れる場合が多く、比較的お子さんにも多いのが特徴です(図1)。
図1. 鎖骨骨折
鎖骨骨折はほとんど(約80%)が鎖骨の中央3分の1の部位で発生しますが、成人から高齢者の場合は肩寄りの遠位端の骨折を生じることもあります(図2)。
骨折すると、体の中央寄りの近位骨片は上方へ、肩寄りの遠位骨片は下方にずれます。鎖骨の正常の形が変形し、さらに両骨片が重なり合って短縮すると、肩幅が狭くなり、骨折部に皮下出血やはれ・痛みが生じ、腕や肩を動かすとさらに痛みが強まります。
図2. 遠位端の鎖骨骨折
診断は最初に単純X線(レントゲン)を用いて行います。中央部での骨折は比較的診断が容易ですが、撮影方向によっては骨折がわかりにくいこともあるので専門医による診察や診断をお勧めします。場合によってはCTスキャンで詳しく確認することもあります(図3)。
図3. CTスキャン
治療は一般的には保存療法が選択されます。特に小児では保存療法が原則です。患児を椅子に座らせて、できるだけ胸を反らせて、重なり合って短縮した骨片を整復します。そして包帯を使用する8字帯固定法や、専用の鎖骨バンド(図4)などで固定します。
固定期間は乳幼児では2~3週間、小中学生では4~6週間程度で、低年齢児ほど短くてすみます。しかし成人では骨折部の短縮や粉砕が強いと骨がつかない(偽関節)で痛みや不安定感を生じたり、たとえ骨がついても短縮し変形が残ったままだと痛みや運動制限などの機能障害を生じるおそれがあるため、手術療法を行った方がいい場合もあります。
図4. 鎖骨バンドによる固定
手術では鋼線を用いた固定(図5)や専用のプレートを用いた固定法(図6)など骨折の形に応じた種々の固定法があります。治療方針や手術法の選択に関しても専門医による診察や診断をお勧めします。
図5. 鋼線を用いた固定
図6. 専用のプレートを用いた固定法
2009年7月