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適切な抄録作成のためのテンプレート

抄録を書く前に読んでいただく注意点

より質の高い発表をしていただくために,抄録の書き方の標準化します.

自分の発表が,どのような研究に当たるのかを自覚して抄録記述することは,良い発表を行う第一歩です.その手助けをするのが,今回のテンプレートです.できうる限り,テンプレートに沿って抄録作成をしてください.
どうしてもあてはまらない「器具の工夫」などは,フリーのテンプレートをもちいてくださって結構です.研究分類の選択が,もし間違っていたとしても,それを理由に発表を断ることはありません.

この抄録テンプレートの目的は骨折治療学会全体として,「発表の質を高めていこう」ということです.今後も抄録テンプレートはブラッシュアップしていく予定です.是非,皆さまのご協力をよろしくお願いいたします.

目次

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  1. 臨床研究、臨床試験、「介入」とは
  2. 研究デザインの「型」についての概説
  3. 研究デザインごとの抄録テンプレート
臨床研究、臨床試験、「介入」とは

臨床研究とは:「医療における疾病の予防方法, 診断方法および治療法の改善,疾病病原および病態の理解並びに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学系研究であって,人を対象とするもの」と,定義されています.要するに人を対象とする医学研究のことです.日本骨折治療学会の学術集会で発表されるほとんどの演題は臨床研究に該当します.
臨床試験とは:臨床研究のうち,予防,診断,治療法等の介入の有効性・安全性を前向きに明らかにするために行われるものです.
「介入」とは:研究目的で,人の健康に関する様々な事象に影響を与える要因1) の有無又は程度を制御する行為2) のことを指します.
1)傷病の予防,診断又は治療のための投薬, 検査や健康の保持増進につながる行動など
2)通常の診療を超える医療行為であって,研究目的で実施するものを含む
注意!投薬や手術などの医療行為を伴う研究の中でも,
 1) 研究目的で通常の診療を超えた行為
 2) 通常の診療と同等であっても,割り付けて群間比較するもの
を介入研究と呼びます.介入があるからといって,必ず介入研究になるわけではありません.

参照:人を対象とする医学研究に関する倫理指針.平成26年12月22日(平成29年2月28日一部改正)

研究デザインの「型」についての概説

研究デザインの「型」

研究デザインの「型」

福原俊一著.「臨床研究の道標」(第2 版,下巻,p18)から引用改変

日本骨折治療学会での発表では,ケースシリーズが一番多い研究デザインだと思われます.研究デザインの「型」としては,ケースシリーズの多くは症例報告と同じエビデンスレベルになります.ただし,症例のサンプリングがしっかりできていていることが担保でき,かつ曝露要因(起点とした時点の治療法など)からアウトカムの発生を観察する場合には,過去起点コホート研究(「後ろ向きコホート研究」と記載されている教科書が多い)のデザインとして研究することも可能です.サンプリングがしっかりできているとは,inclusion criteria とexclusion criteria が厳格で,かつfollow up 率が高いという意味です.

研究デザインごとの抄録テンプレート
1)症例報告のテンプレート(全角800文字)

【研究デザイン】 症例報告
【報告の新規性】 以下から選択
   1. (比較的)まれな有害事象・副作用(と,その対応)
   2. 予測できなかったあるいは新規の臨床経過
   3. (比較的)新しい診断法・治療法
   4. 2つの疾患の間の関連性
   5. 病態生理の発見あるいは推察
   6. その他
【背景】 既知のこと,未知のことを記載してください.症例報告では,この未知のことに対する臨床的新規性を報告してください.
【臨床経過】 過不足なく必要な情報を記載してください.
【考察】 結論に至る理由を述べてください.
【結論】 報告の臨床的意義を必ず述べてください.

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症例報告の抄録(例)

症例報告:頚椎ロッキングプレートで治療した脆弱性胸骨骨折後偽関節

【研究デザイン】 症例報告.
【報告の新規性】 新しい診断法・治療法,病態生理の推察.
【背 景】 胸骨骨折後の偽関節は1%以下とまれで,治療は保存療法が原則である.手術療法は,若年者の新鮮骨折に対するものが主で,脆弱性胸骨骨折や偽関節に関する報告はない.また,固定材料に関しても一定のコンセンサスはない.
【臨床経過】 80歳,女性.階段から転落して前胸部を打撲し,当院を初診した.X線写真で骨傷はなく,胸部打撲と診断され,保存療法を受けた.受傷から5か月が経過しても強い前胸部痛が続き,X線写真再検査およびCT検査で,胸骨体部骨折後の偽関節と診断した.
第6胸椎の陳旧性圧迫骨折による,脊柱の後弯変形も伴っていた.骨密度検査でT-score - 3.2 の骨粗鬆症があり,ビスフォスフォネート製剤とNSAIDs投与で経過観察したが,疼痛による日常生活の著しい制限が続いたため手術療法を行うことにした. 胸骨正中縦切開で進入した.偽関節部の線維性組織を掻爬後に主骨片を整復し,腸骨から採取した自家海綿骨を移植し,頚椎ロッキングプレートで固定した.外固定は併用しなかった.術翌日から前胸部痛は消失し,術後6か月のCT検査で骨癒合を確認した.
【考 察】 脆弱性胸骨骨折は後弯変形に起因すると報告されているが,本例の胸骨骨折偽関節も脊柱の後弯変形があり,偽関節発生にも後弯変形は関与しているかもしれない.また,胸部外科の領域では,胸骨のワイヤリング固定がよく用いられるが,合併症も多い.今回使用した頚椎ロッキングプレートは胸骨固定に大きさが適合し,かつ,胸骨後面を貫通させずにスクリュー固定できるので,固定力と安全性ともに良いと推察する.
【結 論】 骨粗鬆症による後弯変形は,胸骨骨折偽関節のリスクになり得ること,および,頚椎ロッキングプレートが,胸骨偽関節の内固定材として有用であるという2つのことが明らかになった.

2)臨床研究(meta-analysis,systematic review 以外)のテンプレート(全角800文字)

【背 景】 既知のこと,未知のことを,この順に述べてください.
【目 的】 未知のことを解明するのが研究の目的です.「調査,測定,計測,検討する」のは,何かを知るためにやることです.だから,「調査,測定,計測,検討する」ことは目的ではありません.「〇〇を明らかにすること,〇〇を知ること」などと書いてください.
【研究デザイン】 過去起点コホート研究(=後ろ向きコホート研究),症例-対照研究(case-control study),ケースシリーズ,コホート研究,非ランダム化比較臨床試験,ランダム化比較臨床試験,横断研究,縦断研究などから一番近いものを明記してください.
【設 定】 一施設か,多施設か,どのような研究施設・医療施設かなどを記載してください.
研究資金援助等があれば「科学研究費で行った研究」のように記載してもよいです.
【対 象】 どんな人を対象としたのか,文字数に余裕があればinclusion & exclusion criteriaを記載してください.
【介入/方法】 どんな治療・検査等をやったのかを記載してください.研究によっては,【介入】と書きにくい場合があります.その時は 【方法】として,何を調査したか等を短く記載してください(症例-対照研究(case-control study)の抄録例を参照).
【主要アウトカム】 具体的にどんなデータを計測・測定・収集したのかを記載してください.例えば,SF-36などの患者立脚型アウトカム,骨癒合率,骨癒合期間,輸血量,入院期間,追加手術を要する合併症など,具体的に記載してください.「治療成績を調べた」は,具体的でないので不可です.副次アウトカムがあれば記載してよいです.また,文字数に余裕があれば統計学的手法に言及してください.
【結 果】 設定したアウトカムについての結果を述べてください.研究結果のみを記載し,考察は書かないでください.
【結 論】 研究目的に合致した結論のみを書いてください.結論は目的と呼応する必要があります.(例えば,目的が感染予防で結論がウイルス量の減少では,呼応しているとは言えません.)

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① 過去起点コホート研究(=後ろ向きコホート研究)の抄録(例)

足関節果部骨折に伴うsyndesmosis 損傷の固定:吸収性スクリューとスーチャーボタンのいずれが有用か?

【背景】足関節果部骨折に合併した不安定性のあるsyndesmosis 損傷には脛腓間固定が必要である.スーチャーボタンによる固定は金属製スクリューと比較し術後の機能成績が同等で抜釘を要さないという利点が報告されている.同様に抜釘の必要がない吸収性スクリューとスーチャーボタンを比較した報告はない.
【目的】Syndesmosis 損傷に対する脛腓間固定に吸収性スクリューとスーチャーボタンのいずれがより有用でかつ安全であるかを明らかにすること.
【研究デザイン】過去起点コホート研究.
【設定】大学附属病院1施設,連続する全例.
【対象】2010年4月から2018年3月に足関節果部骨折に合併したsyndesmosis 損傷に対し,脛腓間固定を行った全患者.
【介入】脛腓間固定の適用は,骨折固定後に足関節外旋テストを行い,透視下のmortise viewでtibiofibular clear spaceが健側より開大する場合とした.吸収性スクリュー群とスーチャーボタン群の2群に分け,有用性と安全性を比較検討した.
【主要アウトカム】術後12か月でのAmerican Orthopaedic Foot and Ankle Society(AOFAS) scoreを3,6,12か月で測定し,インプラントの種類がAOFAS scoreに与える影響を一般化推定方程式で推定した.副次評価項目は出血量,手術時間,入院期間,合併症発生割合とし,インプラント間での差をt検定及びχ二乗検定で比較した.有意水準は0.05とした.
【結果】対象は49例で,スクリュー群33例,ボタン群16例であった.平均年齢は37.4歳,男性41例,骨折型はAO分類type Bが16例,type Cが33例であった.術後12か月時点でのAOFAS scoreはボタン群で有意に高かった(回帰係数5.3,95%CI:0.57-10,p<0.05).副次評価項目はインプラント間での有意差はなかった.
【結論】足関節果部骨折に合併した不安定性のあるsyndesmosis損傷に対するスーチャーボタン固定は,吸収性スクリュー固定より術後機能成績が良く有用で,安全性は同等であると考える.

② 症例-対照研究(case-control study)の抄録(例)

大腿骨Infra-isthmal fracture は偽関節発生リスクである

【背 景】大腿骨骨幹部骨折に対する治療のゴールドスタンダードは髄内釘法であるが,5-10%は遷延癒合・偽関節になる.
Isthmusより遠位に骨折が及ぶinfra-isthmal fractureは,遠位骨片内の髄腔が広いためinterlocking nailを用いても遠位骨片の固定力不足が生じて偽関節発生のリスクになる可能性があるが,これまで報告がない.
【目 的】大腿骨infra-isthmal fractureが偽関節発生リスクになるかどうかを明らかにすること.
【研究デザイン】症例-対照研究
【設 定】大学附属病院1施設での後ろ向き研究
【対 象】1999年1月から2010年9月に,当院で治療した大腿骨髄内釘固定後の偽関節35例(他院からの紹介23例)を症例群,同時期に当院で髄内釘を用いて治療し問題なく治癒した105例から年齢のみを症例群にマッチングさせた70例を対照群.
【方 法】偽関節発生の有無に影響した因子を後ろ向きに検討した.
【主要アウトカム】骨折型,軟部組織損傷,髄内釘の⾧さ,横止めスクリュー折損,髄内釘径,遠位骨片の⾧さの平均値,ダイナミゼーション(一側スクリューの抜去)を調査し,偽関節発生に影響した因子を調べた.骨⾧測定の遠位の基準は,顆間中央から大転子先端(正面像)およびBlumensaat's line とTrochlear lineの交点(側面像)とした.この点から大転子頂部までの距離の平均値を大腿骨⾧とした.遠位骨片の⾧さは,正面像で内・外側,側面像で前・後方の⾧さを測定して平均値を求めた.偽関節発生に対するこれらの因子の影響を単変量解析および多変量解析で調査した.
【結 果】開放骨折,横止めスクリュー折損,遠位骨片の短さ,ダイナミゼーションが,大腿骨髄内釘固定後の偽関節発生に影響していた.ROC 解析の結果,大腿骨⾧に対する遠位骨片の平均⾧43%未満が偽関節発生リスクのカットオフ値であった.多変量解析では,43%より短い大腿骨骨折は開放骨折と同等の偽関節リスクがあることがわかった.
【結 論】大腿骨infra-isthmal fractureが偽関節発生リスクである.

③ ケースシリーズの抄録(例)

Induced membrane technique による巨大骨欠損の再建:自家海綿骨単独移植と人工骨併用との間に差はあるか?

【背 景】巨大骨欠損の再建法であるInduced Membrane Technique(IMT法)では,移植骨量が不足するという問題がある.当科では,採骨量を減らすために,人工骨であるβ-TCP(tri-calcium phosphate)を体積比で約50%自家海綿骨に混合して骨欠損部に移植している.人工骨を併用する方法と,自家海綿骨単独移植との間に治療成績や合併症に差があるかどうかは不明である.
【目 的】IMT法において,自家骨のみ移植した場合と自家骨とβ-TCPを混合して移植した場合とを比較して,治療成績に差があるかを知ること.
【研究デザイン】ケースシリーズ
【設 定】大学附属病院1施設での後ろ向き研究
【対 象】2011年4月以降にIMT法で骨再建を行った脛骨の感染性偽関節と骨髄炎患者のうち,骨移植術後半年以上の経過観察が可能であった26例(男性23名,女性3名).
【介 入】感染巣のデブリドマン後の骨欠損部に骨セメントスペーサーを留置した.感染鎮静化後に骨セメントを抜去し,自家海綿骨あるいは自家海綿骨とβ-TCP顆粒を移植した.自家海綿骨の単独移植群(自家骨群)5例とβ-TCPを体積比で約50%混合した群(人工骨群)21例の2群に分け検討した.
【主要アウトカム】骨癒合率,骨移植術から骨癒合までの期間,追加手術を要した合併症.Mann-Whitney U-testを用い有意水準5%で群間比較した.
【結 果】全体の年齢は51歳(中央値,以下同じ),発症・受傷からIMT法の初回手術までの期間は11か月,骨欠損の大きさは40mmで,自家骨群と人工骨群との間に有意差はなかった.全例で骨癒合が得られ,骨癒合期間は自家骨群6か月,β-TCP 群5か月で有意差はなかった.合併症として,自家骨群の1例で感染の再燃があり追加手術を要した.
【結 論】自家海綿骨とβ-TCPを1:1に混合して移植しても,海綿骨単独移植と治療成績に差はない.

④ 「どの研究デザインにも当てはめにくい研究発表」の抄録

例えば,独自の手術方法,手術のコツ,治療手技・手術器具の工夫などを発表したい場合,どの研究デザインにも当てはまりにくいことがあると思います.その場合には,下記の内容が入った抄録を作成して下さい.
【背 景】
【目 的】
【方 法】
【結 果】
【結 論】
*上記の通りには書きにくい場合,体裁の多少の変更は認めます.

3)Meta-analysis,systematic review のテンプレート(全角800文字)

【背 景】
【目 的】
【データソース】 いつ,どのデータベースなどを対象としたかを記載してください.
【データ抽出と解析方法】 対象とした研究の内容・種類,Quality assessment や Bias assessment 等をどのような基準で行ったか,inclusion criteria に合致した研究がどのくらいあり,どのような手法で統合したかなどを記載してください.
【結 果】
【結 論】
*【背景】【目的】【結果】【結論】は,臨床研究(meta-analysis,systematic review 以外)テンプレートに準ずる.

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Meta-analysis,systematic review の抄録(例)

高齢者橈骨遠位端骨折の治療で掌側ロッキングプレートと閉鎖整復・ギプス固定はどちらが優れているか?

【背景】高齢者の橈骨遠位端骨折患者でVolar Locked Plating: VLPによる治療がClosed reduction and casting: CRCと比較し優れた機能的予後をもたらすかどうかは不明である.
【目的】高齢者橈骨遠位端骨折患者を対象に,VLPとCRCの転帰を比較した無作為化比較試験のシステマティックレビューとメタアナリシスを実施すること.
【データソース】2019年8 月13 日に以下のデータベースを用いて,橈骨遠位端骨折に対する無作為化比較試験を対象に検索を行った.MEDLINE, Embase, CINAHL, CENTRAL,Scopus, Web of Science Core Collection, LILACS, Google Scholar, clinicaltrials.org, ISRCTN, Open Grey databases.
【データ抽出と解析方法】全年齢層の患者を対象とした研究から生データを取得し高齢者サブグループを解析の対象とした.主要評価項目は追跡期間1年以上のDASHスコアとした.副次的転帰として,3ヵ月時のDASH スコア,可動域,最終的なX線上のアライメント,および合併症を評価した.各アウトカムに関してランダム効果モデルを用いて統合を行った.DASHスコアの変化を臨床的に重要な最小差(MCID)推定値10 と比較し,臨床的関連性を評価した.データの抽出は2人の評価者で行い,バイアスリスクはCochrane Risk of Bias tool を使用して評価した.
【結果】2152編の論文に対してスクリーニングを行い6編を対象とした.VLP患者274例とCRC患者287例の特徴は類似していた.最終フォローアップ時および3 ヵ月後のDASHスコアはVLP群の方がCRC群よりも有意に良好であった.VLP群ではX線上のpalmar tilt, radial inclination,回外可動域は有意に優れていたが,X線上のulnar variance,掌屈背屈可動域,回内可動域,合併症発生割合には差が見られなかった.
【結論】高齢者橈骨遠位端骨折の治療においては,VLPの方がCRCよりも3ヵ月後,受傷後2年までの機能的予後が有意に良好であった.しかし,最終的なDASHスコアの差はMCIDの推定値を超えておらず,この差は臨床的には有意とはいえないものであった.

4)基礎研究論文のテンプレート(全角800 文字)

【背 景】基礎研究を実施するに至ったモチベーション,臨床的問題点などを述べてください.
【目 的】仮説検証型であれば,仮説も述べてください.
【方 法】実験材料,実験方法について具体的に,かつ簡潔に述べてください.
【結 果】肝となる実験結果を要約して述べてください.
【考 察】実験結果はどのように解釈できるかを述べてください.仮説と異なる結果を得たなら,その理由を考察してください.
【意 義】研究成果が今後臨床にどのように役立てられるか,研究成果にどのようなインパクトがあるかを述べてください.

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基礎研究論文の抄録(例)

1型糖尿病ラット骨折モデルにおける炭酸ガス経皮吸収による骨折治癒促進効果の検討

【背景】糖尿病患者では骨折後の遷延癒合,骨癒合不全の発生頻度が高い.1型糖尿病動物モデルにおいて軟骨形成阻害や軟骨内骨化過程遅延がその原因と示されている.我々は以前ラット大腿骨骨折モデルを用いて炭酸ガス経皮吸収が軟骨内骨化を促進することを報告している.
【目的】骨折治癒に不利な1 型糖尿病の条件下でも炭酸ガス経皮吸収が骨折治癒を促進すると仮説を検証することを目的とした.
【方法】1型糖尿病誘発ラットの大腿骨に閉鎖性横骨折を作成し,骨折肢に炭酸ガスを経皮吸収させる群(炭酸ガス群)と経皮吸収させない群(Control群)で骨折治癒過程を比較検討した.炭酸ガス群には経皮吸収を促進するハイドロゲルを骨折肢に塗布し100%炭酸ガス投与を1日20分間,週5回行った.骨折後1,2,3,4週でX線学的,組織学的評価を行った.骨折後1,2,3,4週で骨折部周囲の新生仮骨を採取しreal time PCRによる遺伝子学的評価を行い,骨折後4週で骨強度評価を行った.
【結果】骨折後4 週の時点で炭酸ガス群の骨癒合率は80%で,Control群の20%に比して有意に高かった.骨折後1,2週のSafranin-O染色ではControl群と比較し炭酸ガス群で有意に広い範囲に軟骨形成を認め,骨折治癒進行過程を評価するAllen’s grading score は全てのtime pointにおいて炭酸ガス群で有意に高値であった.Isolectinを用いた蛍光免疫染色では,全てのtime pointにおいて炭酸ガス群で有意に血管新生が促進したことが示された.遺伝子学的評価では軟骨形成,軟骨内骨化,血管新生,骨形成等に関連する遺伝子が複数のtime pointで炭酸ガス群において有意に高く発現していた.骨折後4週時の骨強度は炭酸ガス群で有意に高かった.
【考察】炭酸ガス経皮吸収は1 型糖尿病における軟骨内骨化の遅延を改善し,骨折治癒を促進する可能性が示された.
【意義】炭酸ガス経皮吸収は1 型糖尿病による骨折治癒遷延・不全に対して有効な治療手段となることが示唆された.

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