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骨折の解説

膝蓋骨骨折

森川 圭造(森川整形外科医院)

膝蓋骨は、膝の関節の前方に存在し、一般に「膝のお皿の骨」と言われている丸い骨の事です。 この膝蓋骨は、膝の動きを滑らかにする役目を持ち、すなわち膝の曲げ伸ばし運動を効率良く行うために、動きの中心として支えています。
膝蓋骨骨折は、転んで膝をぶつけた、階段などの角に膝をぶつけた、或いは膝の上に物が落ちて来て当ったなどの原因で骨折します。

図1)の様に、膝蓋骨が骨折すると、2つあるいはそれ以上の骨のカケラに割れ、大腿四頭筋腱と膝蓋腱という筋腱によって引っ張られ、骨折部が引き離されていきます。 そうなりますと、自分の意思では膝がうまく動かなくなります。 そして膝が激しく腫れ、押さえると非常に痛みを感じる様になり、場合によっては、膝蓋骨のあたりに窪みを触れることができ、骨が折れているのが分かることもあります。

図1. 受傷時。膝蓋骨が骨折し、折れた骨のカケラが引き裂かれている。

膝蓋骨骨折の治療は、手術を行わない保存的治療と手術を行う外科的治療の2つがあります。

保存的治療は、膝蓋骨が骨折しても、折れた骨のカケラがあまり引き裂かれなかった場合に行われます。 具体的には、太ももから足までの長いギプスを巻いて固定したり、装具という特殊な固定具をつけたりして、膝をまっすぐに伸ばした状態で約1ヶ月程度固定します。 その後、膝の曲げ伸ばしのリハビリテーションを開始していきます。

外科的治療法は、膝蓋骨が骨折して、折れた骨のカケラが引き裂かれた場合に必要です。 小さな骨のカケラによる骨折が多いので、細い針金を巻いて固定する方法が良く行われています(図2)。
このようにして膝蓋骨を包んでいる筋腱の強い引っ張る力に対抗して、骨折した膝蓋骨が引き裂かれるのを防ぎます。
膝蓋骨を大変強く結び付けるので、手術後は、早々に膝の曲げ伸ばしやそのまま歩行することが出来でき、リハビリテーションの期間も短縮出来る長所を持っています。

図2. 手術治療後。まっすぐな硬い針金で骨折を固定し、その針金に細い柔らかい針金を巻き付ける。
この方法によって、折れた骨のカケラが引き裂かれるのを防ぐことができる。

このように膝蓋骨を骨折したと思われる場合には、まず、応急的な対処として、膝をまっすぐにして、添え木を用いて、膝をまっすぐに維持できるように努めてください。 そして膝のあたりを氷か冷水で冷やして下さい。
その後、専門医に相談をし、その治療方針を決めて頂くのが最良と思います。

2009年7月