学会について

一般社団法人 日本骨折治療学会 理事長 ご挨拶

日本骨折治療学会会員の皆さまへ

理事長 野田 知之

一般社団法人 日本骨折治療学会 理事長
野田 知之

 この度、2023年6月末に開催された日本骨折治療学会理事会において、本学会の第7代理事長に拝命されました川崎医科大学運動器外傷・再建整形外科学 / 川崎医科大学総合医療センター整形外科の野田知之でございます。本学会は故 榊田喜三郎(京都府立医大名誉教授)先生が1978年に開催した第1回日本骨折研究会をルーツとして、1992年の第18回から日本骨折治療学会と改称され、来年には50周年の節目を迎える伝統ある学会で、4500名を超える会員を有します。4年に渡って本学会の発展に多大なる貢献をされた前理事長の渡部欣忍先生からこの大任を引き継ぎ、その重責に身の引き締まる思いで一杯です。理事長就任を大変光栄に存じますと共に、理事会はじめ会員の先生方のご指導、ご協力を仰ぎながら本学会のさらなる発展に向かって精一杯邁進する所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 骨折を中心とする整形外傷手術はわが国の全整形外科手術の約半数を占めるとされ、整形外傷治療の教育ならびに治療レベルの向上は非常に重要な問題と考えられます。また整形外傷治療は多様で奥深く、良好な治療成績獲得には最新の知識と技術を駆使する必要があります。しかしながら従来、多くの大学あるいは基幹病院の指導医の興味は変性疾患に傾いて外傷治療はおざなりな対応となりがちで、さらには医療圏ごとに外傷センターを核とする診療システムを確立した欧米に対して、わが国の診療・教育システムは改善傾向にあるもののいまだそのレベルに達していないと言わざるを得ない状況が続いています。そのような現況にあって、本学会が整形外傷の研究、教育、治療成績向上に果たす役割はますます高まっていると考えられます。前理事長の渡部欣忍先生が掲げられたマニフェストを踏襲・修正しながら理事、各委員会、評議員の皆様との連携・協力のもと、より具体的な到達目標も示してさらなる発展を目指します。

  1. 若手教育, 最新知識の共有
    本学会が年1回主催しているベーシックコースとアドバンスコースの研修会ですが、今年でベーシックは第17回となり多くの若手医師に対する標準治療の啓蒙に寄与してきました。先述した整形外傷手術の占める割合から考えても本研修会の役割は非常に重要であり、さらに多くの整形外科専攻医の受講を目指します。最終目標は整形外科専攻医の受講必修化でそれを目指して活動します。SR委員会による論文レビュー(OTAKU事業、学術集会でのクイックレビュー)も継続し、アドバンスコースと合わせて、整形外傷に興味ある専門医や指導医のアップデート含め教育活動を充実させます。また渡部前理事長を委員長として大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン改訂にも着手いたします。
  2. レジストリー構築, 外保連活動推進
    本学会は、単なる手術症例数の把握だけでなく、治療に要する医療資源や治療成績の集積も考えたレジストリーとして、開放骨折(DOTJ)、寛骨臼骨折(AFROS)など行い報告してきました。これらは治療に関するエビデンスだけでなく、適切な保険診療のデータとしても寄与すると考えられ、前述したレジストリーの発展版を開始するべく活動中です。これに関連して外保連活動も以前より積極的に行っており、先の大腿骨近位部骨折の早期手術加算や二次骨折予防加算においても大きな役割を果たしたと考えられ、骨折治療関係の保険点数の適正化の活動を継続します。
  3. 国際化推進
    世界はますます繋がりを深め情報が瞬時に行き交うようになり、本学会に限らずとも、いまや国際化は避けて通ることの出来ない問題で国際的な情報共有や協力が不可欠です。以前よりあった韓国、台湾とのexchange programはもとより、OTA(Orthopedic Trauma Association)ならびにIOTA(International Orthopaedic Trauma Association)と積極的に連携して関係を強化し、若手・中堅の会員の活躍の場を広げていきたいと考えております。さらには本年度の事業計画にもありますよう2028 IOTA Triennial Meetingの招致に向けて活動して参ります。皆様のご理解ならびにこれら国際学会への参加協力などよろしくお願いいたします。
  4. 骨転移による病的骨折診療への積極的関わり
    近年、骨転移患者の増加に伴い整形外傷医や一般整形外科医による病的骨折治療に対する積極的な取り組みの重要性が認識されるようになってきています。本学会でも習得すべき知識やスキル、多職種連携の重要性など病的骨折治療に対する啓発活動を行っており、これを継続、発展させていきます。
  5. 学会・学術集会の運営、名称見直し
    半世紀にわたり本学会が“骨折”の研究、治療に多大な貢献をしてきたことは会員の皆様が強く自負するところであると思います。しかしながら本学会に対する社会的要請や会員の研究対象・テーマも常に変化しており、欧米の先進国においても学会名にOrthopedic Traumaが冠されることが主流になってきております。具体的には重度開放骨折も“骨折”のみならず遊離皮弁などを駆使し骨・軟部組織複合体を治療しますし、脊椎・脊髄外傷も対象疾患になるため、“骨折”という言葉だけでは整形外傷、運動器外傷全体を表現出来なくなってきている現状があると考えます。学会名改称にあたっては、会員の皆様からのパブリックコメントはじめ理事会、評議員会など慎重に諮っていきたいと考えておりますが、検討事項の一つと考えます。また継続可能な学会運営のためにも、学会・学術集会の財政の適正化、見直しなど提案していきたいと思っております。

 本学会をさらなる発展に導き、未来・次世代に開かれたものとするため、理事長として与えられた期間に全力を尽くす所存です。またその実現には会員の皆様のお力添えが不可欠であり、温かいご支援とご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。